2002 Fiscal Year Annual Research Report
炎症シグナルを標的とした虚血性脳血管障害に対する遺伝子治療に関する研究
Project/Area Number |
14570604
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
大星 博明 九州大学, 医学部附属病院, 助手 (10311838)
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Keywords | 遺伝子治療 / 脳血管障害 / 炎症シグナル / インターロイキン10 |
Research Abstract |
脳梗塞の新規治療法を開発する目的で、局所脳虚血モデルを用いてアデノウイルスベクターによる脳へのインターロイキン10(IL-10)遺伝子導入による脳梗塞の治療効果を検討した。高血圧自然発症ラットの血栓性遠位部中大脳動脈閉塞モデルにより大脳皮質に脳虚血を作製し、虚血90分の時点でヒトIL-10を組み込んだアデノウイルスベクターを脳室内に導入すると、標識遺伝子を導入した群と比較して、脳梗塞の容積は著明に縮小していた。また、脳梗塞組織での白血球細胞は、IL-10導入群では標識遺伝子導入群に比較して減少していた。 従来の研究では、脳梗塞の進展過程においてIL-1やTNFαなどの炎症性サイトカインが組織障害に重要な役割を果たしていることが示唆されている。IL-10はこれらの炎症性サイトカイン産生を抑制することが明らかにされており、同作用が脳梗塞縮小に寄与したと考えられた。また、今回の結果では梗塞巣への白血球浸潤がIL-10の導入により抑制されており、炎症性サイトカインによるシグナル伝達で生じる内皮ICAM1などの活性化をIL-10の過常発現によって阻害することで白血球細胞の浸潤が抑制され、脳梗塞の縮小に関与したと考えられた。 これまでの脳血管障害に関する遺伝子治療の基礎研究においては、遺伝子導入によって脳虚血に対する保護効果が認められるという報告は少なくないが、あらかじめ遺伝子導入を行った状態で虚血を負荷するという条件で得られたものがほとんどであり、同投与法で脳梗塞の縮小効果を示し成績はなかった。今回の我々の検討では、IL-10の遺伝子導入を脳虚血負荷90分後に行っても脳梗塞の容積を縮小することが可能であったことから、脳梗塞の急性期治療としての遺伝子治療が臨床的にも有効である可能性が示唆される。現在、さらに抗炎症シグナルを標的とした遺伝子治療の可能性について検討を進めている。
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[Publications] Ooboshi H, et al.: "Brain ischemia as a potential target of gene therapy"Exp Gerontol. 38(1-2). 183-187 (2003)
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[Publications] Kitayama J, et al.: "Chronic administration of a tyrosine kinase inhibitor restores functional and morphological changes of the basilar artery during chronic hypertension"J Hypertens. 20(11). 2205-2211 (2002)
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[Publications] Kitazono T, et al.: "Increased activity of calcium channels and Rho-associated kinase in the basilar artery during chronic hypertension in vivo"J Hypertens. 20(5). 879-884 (2002)
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[Publications] Takada J, et al.: "Adenovirus-mediated gene transfer to ischemic brain is augmented in aged rats"Exp Gerontol. (in press). (2003)
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[Publications] Ooboshi H, Ibayashi S: "International Congress Series"Gene therapy for cerebral arteries (In press). (2003)