2004 Fiscal Year Annual Research Report
急性冠症候群発症における脂肪酸代謝の役割に関する研究
Project/Area Number |
14570680
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
坂本 知浩 熊本大学, 医学部附属病院, 講師 (00301375)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉村 道博 熊本大学, 大学院・医学薬学研究部, 助教授 (30264295)
小川 久雄 熊本大学, 大学院・医学薬学研究部, 教授 (50177135)
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Keywords | 急性冠症候群 / 脂肪酸 / 冠血流予備能 / プラスミノゲンアクチベーターインヒビター / インスリン抵抗性 / 脂肪酸分画 |
Research Abstract |
急性冠症候群患者における凝固・線溶動態についての検討を行った結果、線溶系の主なコントロール因子で、冠動脈内血栓の消退に非常に大きな影響を持つ血中プラスミノゲンアクチベーターインヒビター(PAI)活性は、これらの患者で上昇していることが判明した。またこの上昇は血中の内臓脂肪の量に相関していた。内臓脂肪の多い症例においては、血中の遊離脂肪酸(non-esterified fatty acid ; NEFA)値が上昇しており、これらのNEFAへ値とPAI活性値との間には密接な関係があった。 次に薬物投与により脂質代謝の制御によって、急性冠症候群の発症リスクを低減する効果が得られるかどうかの検討を行った。我々のこれまでの検討で、PAI活性の上昇は、冠動脈疾患慢性期の心血管イベントを増加させることが明らかになっている。このPAI活性を制御する目的で、血中脂肪酸、中性脂肪値のフィブラート系薬剤経口投与による介入を行った。不飽和結合をもつ脂肪酸分画であるオレイン酸(C18:1)やリノレン酸(C18:2)の構成割合が、飽和脂肪酸であるパルミチン酸(C16:0)やステアリン酸(C18:0)に比較し有意に低下し、PAI活性を低下させた。これは多価不飽和脂肪酸に存在する二重結合による脂質過酸化物の発生が、脂肪細胞からのPAI-1産生に関与していることが示唆される基礎実験の結果と符合した。血中遊離脂肪酸組成に影響を与えると考えられるイコサペント酸エチル製剤でも同様の効果が確認され、PAI活性低下の割合は、肥満患者において著明であった。
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