Research Abstract |
心不全(CHF ; chonic heart failure)患者で,末梢血中の炎症性サイトカインinterleukin(IL)^6,IL-1β,TNF(tumor necrosis factor)-α値が上昇し,CHF重症度NYHA class)と相関関係がある。最近,不全心筋内にIL-6,IL-1β,TNF-α mRNA,蛋白の発現が示され,心筋自体が炎症性サイトカインの産生部位と報告された。一方,エンドトキシン(LPS ; lipopolysaccharide)刺激で健常人単球上にIL-6,IL-1β,TNF-αが発現するが,CHF患者の単球の研究はなく,これらの産生部位は不明。C-reactive protein (CRP)は冠動脈粥腫内に存在し,急性炎症等で上昇し,単球上にIL-6,IL-1β,TNF-αを誘発し,急性冠症候群(ACS ; acute coronary syndrome)患者で上昇し,CHF発症に関与。対象と方法;健常者(20例,平均年齢52歳)とCHF患者(50例,平均年齢62歳,平均左室駆出率(EF);23%)より単核球を抽出。無刺激下(control),LPS(100pg/mL),CRP(25μg/mL ; ACS患者に認められる濃度)それぞれ単独,CRP+LPS刺激時における単球上のIL-6,IL-1β,TNF-αをELISA法にて測定。結果:1)Control, LPS, CRP単独刺激,CRP+LPS刺激時のいずれにおいても,CHF患者単球上のIL-6,IL-1β,TNF-α値は,健常者のそれらに比して有意に高値。2)CHF患者において,単球上IL-6,IL-1β,TNF-α値はCHF重症度,心筋壊死の指標となる血漿中brain natriuretic protein(BNP)値,トロポニンTと有意な正の相関関係を認めた(それぞれp<0.01)。3)平均1.年6ヶ月の経過観察中,心事故(CHFの悪化または心不全死)を認めた患者の,単球上IL-6,IL-β,TNF-α値は,心事故のない例のそれらに比べて有意に大。4)CHF患者にて,心事故を有する例と有しない例とで,EF,薬物療法に差なし。以上よりCRPはCHF患者において,炎症性サイトカインの産生を亢進させ、直接CHFの悪化に関与していることが示唆された。今後の研究:1)CHF患者において,単球上のIL-6,IL-1β,TNF-α mRNA値をRT-PCR法にて測定する。2)心臓カテーテル検査時に心筋生検を施行し,心筋内IL-6,IL-1β,TNF-α の蛋白・mRNA量(RT-PCR法)を測定,単球上のIL-6,IL-1β,TNF-α値と比較検討する。3)β遮断薬のカルベジロールが,心不全の予後を改善する機序として抗サイトカイン作用がある。心不全の治療に必須なACE阻害薬,アンジオテンシンII受容体括抗薬,利尿薬等を内服中の患者で,β遮断薬内服前・内服4週後において,単核球を分離し,Control, LPS, CRP単独,CRP+LPS刺激時における単球上に発現するIL-6,IL-1β,TNF-α値を測定し,β遮断薬の効果を検討する。
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