2003 Fiscal Year Annual Research Report
エストロゲンのドパミン作動性神経系への関与:産褥期精神病の病因仮説の形態学的根拠
Project/Area Number |
14570918
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
城山 隆 三重大学, 医学部附属病院, 講師 (00252354)
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Keywords | ドパミン / エストロゲン / インターロイキン2 / 産褥期精神病 |
Research Abstract |
当初の研究課題に関する詳細な報告が発表されたため、計画の見直しを行った。弓状核のドパミン作動性ニューロン(DAニューロン)においてインターロイキン2レセプターのαサブユニット(IL-2Rα)の存在を確認していること(本研究実施者の平成11〜12年度科学研究費)、および産褥期に免疫系の大きな変化が起こることに着目して、産褥期精神病の生物学的背景として、エストロゲンとIL-2がDAニューロンにともに直接的に作用する形態学的根拠を探った。免疫組織化学的3重染色(抗IL-2Rα抗体、抗エストロゲンレセプターβサブユニット抗体:ER-β抗体、抗チロシンヒドロキシラーゼ抗体を使用)により、共焦点レーザースキャン顕微鏡を用いて、DAニューロンにおけるIL-2RαとER-βの共存を調べた。弓状核、腹側被蓋野、黒質緻密質のDAニューロンの一部に、IL-2Rα、ER-βがともにみられ、これらのDAニューロンがレセプターを介してエストロゲンとIL-2による直的な二重調節を受けていることが示された。これまでの報告で、出産後のエストロゲン血中濃度と精神症状発現の関連が示唆されており、動物実験でもエストロゲンの線状体、側坐核、前頭前野でのドパミン放出の調節が示されている。一方、産後に慢性関節リウマチなどの自己免疫疾患が悪化することや、分娩前には免疫系活性化のマーカーである可溶性IL-2Rαの血中濃度が増加し、産後2ヶ月までにピークに達することが報告されており、産褥期には免疫系の大きな変化が生じる。また、エストロゲンが末梢血においてIL-2およびIL-2R産生を抑制することが報告されている。今回の研究結果とそれらの知見を総合的に考察すると、産褥期精神病の病因として、DAニューロン、IL-2、エストロゲンといった神経-免疫-内分泌相関の障害の重要性が示唆された。
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