2002 Fiscal Year Annual Research Report
functionalMRIを用いた強迫性障害の認知機能研究
Project/Area Number |
14570931
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
中川 彰子 九州大学, 医学部附属病院, 助手 (70253424)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉浦 敬 九州大学, 医学部附属病院, 助手 (40322747)
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Keywords | 強迫性障害 / 認知機能 / 脳機能 / functional MRI / 遂行機能 / 選択的注意機能 / Stroop Test / 前頭眼窩面 |
Research Abstract |
強迫性障害(OCD)の認知機能と脳機能の関連を検討することを目的としたfunctional MRI(fMRI)検査を施行した。対象は九州大学医学部付属病院精神科を受診したOCD患者14名と年齢および性別をマッチングさせた健常対照者9名で、OCD患者はY-BOCS(強迫症状評価尺度、40点満点)で28.6±4.83点で全例中等度以上の強迫症状を有していた。まず、認知機能の評価のためWAIS-R(知能)、Wisconsin Card Sorting Test(遂行機能)、Stroop Test(選択的注意)を施行した。OCD患者は健常者と比して知的に低い傾向が見られたが、遂行機能、選択的注意機能に差異はなかった。次に、1.5テスラの臨床用MRI装置を用いたfMRI検査を施行した。脳賦活課題として、Stroop Testを応用した課題をプロジェクターによってスクリーンに呈示した。解析にはSPM99を用いp<0.01の部位を有意とした。OCD患者と健常者は両側前帯状回、左頭頂葉、左背外側前頭前野、両側視床、両側小脳に同様の賦活を認めた。しかしOCD患者は健常対照者に比して前頭眼窩面の活動亢進と両側前帯状回、左頭頂葉、両側視床、両側小脳の活動低下が見られた。一方背外側前頭前野の活動には有意差がなかった。前頭眼窩面はこれまでの機能画像研究によって、OCDにおける活動亢進が報告され、病態との関連が強く指摘されている。一方背外側前頭前野は遂行機能、選択的注意機能において中心的役割を担い、帯状回、頭頂葉、視床、小脳は葛藤情報処理、知覚情報処理に関与するといわれている。これらのことから、OCDの認知機能は心理検査上は保たれているものの、画像検査により前頭眼窩面を含むOCDループが選択的注意機能のネットワークに影響を与えていることが示された。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] 中尾智博, 中川彰子: "強迫性障害の認知機能"精神医学. 44巻10号. 1044-1054 (2002)
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[Publications] 中川彰子, 中尾智博: "情動とストレスの神経科学 第五章 情動とストレスの臨床医学 pp233-244"九州大学出版会. 12 (2002)
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[Publications] 中尾智博, 田代信維: "こころの科学 104号 強迫性障害の脳画像所見 pp28-33"日本評論社. 6 (2002)
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[Publications] 中尾智博, 吉浦敬, 中川彰子他: "第24回日本生物学的精神医学会抄録集 functional MRIを用いた強迫性障害の脳機能研究 p175"日本生物学的精神医学会. 1 (2002)
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[Publications] 工藤明子, 中谷江利子, 中尾智博他: "第28回日本行動療法学会発表論文集 強迫性障害に対する行動療法と薬物療法の治療効果比較検討 pp94-95"日本行動療法学会. 2 (2002)
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[Publications] 中尾智博, 中谷江利子, 吉浦敬他: "強迫性障害の研究(4) 行動療法により脳機能・神経心理機能の改善をみたOCDの1例"星和書店 (2003年4月出版予定) (未定). (2003)