2002 Fiscal Year Annual Research Report
アルツハイマー型痴呆の脳電位空間構造の特徴とその塩酸ドネペジル治療による変化
Project/Area Number |
14570951
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Research Institution | Kansai Medical University |
Principal Investigator |
磯谷 俊明 関西医科大学, 医学部, 講師 (10223059)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木下 利彦 関西医科大学, 医学部, 教授 (20186290)
柳生 隆視 関西医科大学, 医学部, 講師 (10239733)
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Keywords | アルツハイマー型痴呆 / 脳波 / 塩酸ドネペジル / Global Field Power / Low Resolution Electromagnetic Tomography / 複雑性 / 国際情報交換 / スイス:ドイツ |
Research Abstract |
1.本研究の対象となった未服薬アルツハイマー型痴呆患者を、Functional Assessment Staging (FAST)日本語版の得点に基づいて、重症群(FAST得点:5-7=中等度・やや高度・高度)11名(男4名、女7名、年齢:68.9±12.5歳)と軽症群(FAST得点:4=軽度)18名(男1名、女17名、年齢:71.6±7.8歳)に分類し、健常者群(FAST得点:12=正常・年齢相応)15名(男4名、女11名、年齢:73.1±8.2歳)との3群間で、脳電位空間全体の強度(エネルギー量)を意味するGlobal Field Power (GFP)を比較した。その結果、重症群のalpha-1(8.5-10Hz)・alpha-2(10.5-12Hz)・beta-1(12.5-18Hz)・beta-2(18.5-21Hz)・beta-3(21.5-30Hz)の各帯域こおけるGFPが、健常者群より小さく(p<0.05)(これらの帯域のLORETA解析では、alpha-1・alpha-2・beta-1で海馬傍回、beta-2で前帯状束、beta-3で後帯状束における重症群の電流密度が低かった)、さらにalpha-2帯域では軽症群より小さかった(p<0.05)。また、軽症群のbeta-3帯域におけるGFPが、健常者群より小さかった(p<0.05)。重症群でのalpha波を含めた速い周波数成分のGFP減少は、脳機能の広汎な低下を反映していると考えられる。最も速い周波数成分であるbeta-3帯域のGFP減少はアルツハイマー型痴呆の初期診断に寄与すると予測される(これは、特に初期・中期に有用な塩酸ドネペジル治療により改善した軽症群で、beta-3帯域のGFPが増大したという我々の結果に矛盾しない)。また、beta-2帯域のGFP減少は、アルツハイマー型痴呆の重症度を表わす指標になる可能性がある。 2.次に、我々は、軽症群と健常者群の間で、脳電位空間全体における複雑性の指標global Omega-complexity (Ω)の値を比較した。結果は、軽症群のΩ値(5.9±1.2)が、健常者群(4.9±1.3)より大きかった(p<0.05)。このことは、軽症アルツハイマー型痴呆患者では、神経細胞の変性・脱落が、脳の情報処理過程の障害をもたらし、神経活動の協調性が低下したことを示唆する。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] 磯谷俊明: "Acetazolamide静脈内投与による脳波変化 -脳血流増加と各周波数帯域の空間的脳波活動との関係-(a pilot study)"日本薬物脳波学雑説. 4(1). 84-87 (2002)
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[Publications] 吉村匡史: "アルツハイマー病の脳電場動態解析による検討"臨床脳波. 44(11). 707-710 (2002)
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[Publications] 吉村匡史: "新しい脳波空間解析手法の応用 -軽症アルツハイマー型痴呆の脳電位場構造とその塩酸ドネペジルによる変化-"臨床神経生理学. 31(1). 5-12 (2003)
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[Publications] Yoshimura M.: "Recent Advances in Human Brain Mapping (p.751-755=分担執筆) : Global field power and low resolution electromagnetic tomography solutions in Alzheimer's disease"Elsevier Science B.V.(Amsterdam). 934 (2002)