2002 Fiscal Year Annual Research Report
アルツハイマー型痴呆の前駆〜初期症状としての精神症状の臨床病理・コホート研究
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14570957
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Organization for Medical Research |
Principal Investigator |
池田 研二 財団法人東京都医学研究機構, 東京都精神医学総合研究所, 参事研究員 (90232181)
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Keywords | アルツハイマー型痴呆 / 精神症状 / 幻覚・妄想 / 痴呆 |
Research Abstract |
剖検例2157例のプロトコールから、65歳以上で精神症状を初発症状として発病した32症例をピックアップした。このうち11例がアルツハイマー病変を伴っていた。病歴記録の検討から、記憶障害に先立って精神症状が現れる場合、病前性格の偏り、難聴などの身体的要因と単居などの環境要因を伴うことが多かった。難聴と幻聴には相関があり、妄想を伴わないこともあった。被害的性格傾向、(女性)単身者は被害妄想形成と相関があり、しばしば体系化していた。個々の精神症状の特徴と経過では、妄想:妄想気分のような一次妄想は見られなかった。被害妄想がほとんどで、内容は「物盗られ」もあるが、記憶障害に基づく単純な物盗られ妄想よりも複雑で、周囲からの非難、悪口や攻撃、被毒妄想が多く、範囲は限られている(家族、アパートの大家など身近な人)。やや体系化した妄想のこともあり、行動化する。妄想の経過:痴呆が進行すると行動化しなくなり、物盗られ妄想などに単純化し、目立たなくなる傾向があった。幻覚:幻聴(死んだ身内の声など)と幻聴に支配された行動・興奮・周囲に対する攻撃、あるいは自殺企図もある。幻視:(虫が見えるなど)はせん妄時以外では少なかった。幻覚の経過:痴呆が進行すると「家族が迎えに来ると言っている」というような願望を反映した単純な内容になったり、言わなくなる。自我意識障害:離人症やさせられ体験などの自我意識障害はなかった。性格変化:病前性格の偏りが強い場合に、先鋭化して現れ乱不機嫌、怒りっぽい、暴力行為などは抑制の解除を思わせる。拒絶(拒食)のこともある。気分障害:大うつ病症状や躁状態で始まる症例はなかった。経過中の気分変調(元気がない)、無気力、行動の減少はみられる。以上のように特有な精神症状というものはなく、記憶障害で始まり、経過中に現れる精神症状と本質的に共通し,ていた。痴呆がごく軽い、あるいは顕在化していない段階の精神症状は多少複雑な形で現れる。行動観察で痴呆を疑わせる何らかのサインがあることが多い。精神症状が下火になったときの診断が重要と考えられた。
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[Publications] Ikeda K et al.: "Morphometrical reappraisal of motor neuron system of Pick's disease and amyotrophic lateral sclerosis with dementia"Acta Neuropathol. 104. 21-28 (2002)
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[Publications] 池田研二: "痴呆性疾患の病理"クリニカ. 29. 177-182 (2002)