2003 Fiscal Year Annual Research Report
新生児仮死時の遅発性細胞壊死に対する低体温療法と薬物併用療法の効果の検討
Project/Area Number |
14571051
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
今井 正 香川大学, 医学部附属病院, 講師 (60176477)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大久保 賢介 香川大学, 医学部, 助手 (80335851)
日下 隆 香川大学, 医学部附属病院, 講師 (50274288)
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Keywords | 遅発性エネルギー障害 / 低体温療法 / 31P-MRS / 新生児仮死 |
Research Abstract |
(目的)新生児仮死に伴う中枢神経系後遺症は、脳性麻痺の主要な原因であり、その病態解明、治療法の確立は重要な問題である。仮死後の脳障害の発症に遅発性細胞壊死が重要と考えられている。遅発性細胞壊死は仮死後一定時間の経過後に発症する現象で、31P-MRSでは、エネルギー代謝動態を示すPCr/Piが一時的にほぼ正常化した後に再び低下するsecondary energy failureとしてとらえられる。昨年はコントロール群と低体温群の両群とも蘇生24時間後のPCr/Piがある程度回復した群とほぼゼロの2群に分かれることを報告した。今年度はPCr/Piが0.2以上の新生仔豚に対する低体温療法の効果について検討した。 (方法)生後24時間以内の新生仔豚を対象とした。低酸素負荷は、吸入酸素濃度を10%で30分、8%で45分間(計75分)行い、同時に頚部に血圧測定用のマンシェットを巻き300mmHgの虚血負荷を行った。低体温療法群は蘇生30分後より冷却パッドを用いた全身冷却法で行い、直腸温を34.5-35.5度に管理した。脳血流の測定はICGを用いて多チャンネル近赤外分光装置とパルスダイデンシトメトリーを用い、脳内エネルギー状態(PCr/Pi)は31P-MRSを用いて負荷前、蘇生後3、18,24時間後測定した。脳組織内pHiは無機リン(Pi)とPCrのchemical shiftで算出した。 (結果および考察)1.蘇生24時間後のPCr/Piは、低体温群は1.15±0.34、コントロール群は0.54±0.21と低体温群の方が有意に高値を示した。2.ICGを用いて測定した蘇生24時間後の脳血流は低体温群は7.34±4.95、コントロール群は17.63±12.07と低体温群の方が虚血再還流が抑制された。3.蘇生24時間後の脳内の総Hb量と酸素化Hb量は低体温群は35.9±4.16、22.06±7.55、コントロール群は21.57±7.55、11.6±4.03とコントロール群の方が総Hb量と酸素化Hb量が低下していた。またコントロール群では有意な光路長の増加が見られ、脳浮腫が考えられた。以上のことより低体温療法は、遅発性脳エネルギー代謝不全を予防できる可能性が示唆された。
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