Research Abstract |
成人における成長ホルモン(GH)の病態生理的意義に関して本年度は以下に示す知見を得た。 1)成長ホルモン(GH)分泌異常症におけるインスリン抵抗性と血中アディポネクチン値 【目的】アディポネクチン(Adipo)はインスリン抵抗性を調節する因子として注目されている。GH分泌不全症,過剰症はいずれもインスリン抵抗性の増大をきたす。そこで,これらGH分泌異常症における血中Adipoを測定し,インスリン抵抗性との関連を検討した。【対象および方法】成人GH分泌不全症(GHD)29例,先端巨大症34例,健常人52例を対象とし,血中AdipoをELISAにて測定し,HOMA-R, BMIなどとの関連を解析した。また,GHD4例,先端巨大症18例について治療前後の変化についても検討した。【結果】GHD,先端巨大症のBMIは各々23.5±0.7,23.9±0.5,HOMA-Rは2.5±0.4,3.4±0.6であり,両病態ともインスリン抵抗性を認めた。GHD,先端巨大症,健常人の血中Adipoは各々10.1±1.1,13.9±1.3,11.7±0.8μg/mlであり,先端巨大症に比較しGHDで有意に低値であった。GHDではAdipoはHOMA-R, BMIと負の相関(R=-0.5,-0.4)を示したが,血中1GF-Iとの相関は認めなかった。GH補充を行った例では体脂肪は減少したが,血中Adipo値との関連は明らかではなかった。一方,先端巨大症ではHOMA-R, BMI, IGF-Iと負の相関(R=-0.5,-0.4,-0.4)を示したが,下垂体腺腫摘出後(<4週)の血中Adiopo値に有意な変化は認めなかった。【考案】両疾患において血中AdipoとHOMA-Rに負の相関がみられ,これらの病態のインスリン抵抗性にAdipoが関与する可能性が考えられた。 2)成長ホルモン分泌不全症における血中レジスチンに関する検討 【目的】脂肪細胞より分泌されるサイトカインの1腫であるレジスチンはインスリン抵抗性発症機構の一因子として注目されている。そこで成人GHDにおけるインスリン抵抗性とレジスチンの関連につき検討を行った。【方法】成人GHD36例を対象とし,血中レジスチンを測定し,HOMA-R, BMIとの関係を検討した。さらに,健常人65例との比較検討を行った。【結果】成人GHDの血中レジスチンは6.6±0.7mg/mlで健常人に比べ高値を示した(4.0±0.2;P<0.0001)。また,HOMA-Rは成人GHD群で健常群に比べ高値を示した(2.80±0.43vs1.46±009, P<0.0001)。成人GHDにおける血中レジスチン値はHOMA-R, BMIとは相関を認めなかった。【結語】成人GHDにおいてインスリン抵抗性の増大,血中レジスチンの上昇を認め,これらは直接に相関を認めなかったものの,本症のインスリン抵抗性の増大にレジスチンが関与している可能性が示唆された。
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