2004 Fiscal Year Annual Research Report
成人における成長ホルモン(GH)の病態生理的意義に関する研究
Project/Area Number |
14571074
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
高野 加寿恵 東京女子医科大学, 医学部, 教授 (50096608)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
肥塚 直美 東京女子医科大学, 医学部, 教授 (80147397)
福田 いずみ 東京女子医科大学, 医学部, 講師 (80238477)
村上 祐子 東京女子医科大学, 医学部, 助手 (60318029)
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Keywords | 成長ホルモン(GH) / 成人GH分泌不全症(GHD) / 先端巨大症 / 非アルコール性脂肪肝炎(NASH) / アディポサイトカイン / インスリン抵抗性 / Metabolic Syndrome |
Research Abstract |
成人における成長ホルモン(GH)の病態生理的意義に関して本年度は以下に示す知見を得た。 (1)成人成長ホルモン分泌不全における非アルコール性脂肪肝炎(NASH)に関する検討 成人成長ホルモン分泌不全症(GHD)はmetabolic syndrome (MS)を呈することが知られている。一方、非アルコール性脂肪性肝障害(NAFLD)、とりわけNASHでもしばしばMSを合併することが知られている。そこで、成人GHDにおけるNAFLD、NASHについて検討し、MSとの関係について検討した。当科に定期的に通院をしている40例の成人GHDでアルコール飲酒量が20g/日以下の症例を対象とした。BMI25以上の肥満を19例に認めた。耐糖能異常、高コレステロール血症、高中性脂肪血症の頻度は夫々20%、55%、60%であった。肝酵素異常(AST、ALTの上昇)は45%に認められ、うち100U/L以上の高値を各々2.5%、7.5%に認めた。肝酵素正常5例、異常7例に腹部エコーを施行し、各々3例、7例に脂肪肝を認めた。肝生検を行った3例では、全例がNASHであり、肝硬変に移行した症例を2例認めた。肝障害を有する群では耐糖能異常、高コレステロール血症の合併頻度が有意に高かった。成人GHDでは耐糖能異常、脂質代謝異常とともに肝障害を高頻度に合併し、この肝障害は腹部エコーを行った症例ではNAFLDと考えられた。生検をし得た症例では全例が予後不良のNASHであり、成人GHDでのNASH発症リスクが高いことが示唆され、本症の生命予後に影響を及ぼす病態として注意が必要である。 (2)成長ホルモン(GH)分泌異常症におけるインスリン抵抗性と血中アディポサイトカイン GH分泌過剰症のみならずGHDでもインスリン抵抗性をきたすことが知られている。本研究ではこれら病態でのインスリン抵抗性を調節する因子としてのアディポネクチン(A)とレジスチン(R)の関与について検討した。成人GHD44例,先端巨大症49例,健常人57例を対象とし,血中A, RをELISAにて測定した。GHD,先端巨大症のHOMA-Rは健常人に比べて高くインスリン抵抗性を認めた。血中A値は両疾患と健常人との差はなかったが,GHDで先端巨大症に比較し有意に低値であった。A値はGHDではHOMA-R, BMIと負の相関を示したが,先端巨大症ではHOMA-Rとの相関はみられず,BMIとのみ負の相関を認めた。血中R値はGHDにおいて,先端巨大症,健常人より有意に高値であったが,両疾患においてHOMA-R, BMIとの相関は認めなかった。GHDでは先端巨大症に比較し血中Aの減少とRの増加がみられ,これらアディポサイトカインがインスリン抵抗性に関与する一方,先端巨大症におけるインスリン抵抗性においては直接の関与は少ないことが示唆された。
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