2002 Fiscal Year Annual Research Report
チロシンホスファターゼによるインスリン抵抗性の臓器特異性の解明
Project/Area Number |
14571088
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Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
前川 聡 滋賀医科大学, 医学部, 助手 (00209363)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
江川 克哉 滋賀医科大学, 医学部, 助手 (10335169)
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Keywords | チロシンホスファターゼ / PTP1B / インスリン抵抗性 / プロテインホスファターゼ |
Research Abstract |
インスリン抵抗性は糖尿病のみでなく循環器疾患など広く動脈硬化性疾患発症の背景となる病態であり、その発症機構の解明とともに軽減の対策が求められる。我々は高血糖状態下のインスリン抵抗性発症に細胞質型チロシンホスファターゼの1つであるPTP1Bが関与することを報告した(Maegawa H. et al. J. Biol. Chem.1995)。さらに、近年PTP1Bのノックアウトマウスが誕生し、同マウスがインスリン感受性の増強、高脂肪食による肥満誘発に対し抵抗性であることが報告され、PTP1Bはインスリン抵抗性軽減の新しいターゲット分子として注目されている。 我々はアデノウイルスを用いる遺伝子導入法によりPTP1BをL6筋細胞およびFao肝細胞に発現させ、インスリン情報伝達、特にIRS-1のチロシンリン酸化の変化および糖輸送、グリコーゲン合成への影響を検討し、PTP1Bが、インスリン情報伝達のnegative regulatorとして働くことを見出した(Egawa K et al. J. Biol. Chem.2001)。しかし、3T3L1脂肪細胞では、その効果が異なると報告されていることから、今回その分子機構の詳細について検討した。 正常および酵素活性欠損PTP1Bを3T3L1脂肪細胞に発現させ、インスリン情報伝達系の変化および糖輸送への影響を検討し、L6筋細胞およびFao肝細胞と比較した。脂肪細胞においては、P13キナーゼ系とMAPキナーゼ系のPTP1Bに対する感受性が大きく異なることを見出し、Shcのチロシンリン酸化が関与することが判明した。さらに、PI3キナーゼ系に対するPTP1B作用の細胞特異性は、インスリンシグナル関連分子の発現量に依存し、比較的インスリン受容体やIRSの発現の多い細胞ではPI3キナーゼ系の障害が軽度であることが判明した(Shimizu S et al. Endocrinology 2002)。 このPTP1B作用の細胞・シグナル経路特異性の存在は、PTP1Bをターゲットとしたインスリン抵抗性治療を考える上で極めて重要な点であると考えられる。
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[Publications] Egawa K, Maegawa H, et al.: "Membrane localization of 3-phosphoinositide-dependent protein kinase-1 stimulates activities of Akt and atypical PKC, but does not stimulate glucose transport and glycogen synthesis in 3T3-L1 adipocytes"J Biol Chem. 277. 38863-38869 (2002)
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[Publications] Shimizu S, Maegawa H, et al.: "Mechanism for differential effect of PTP1B on Akt versus MAP kinase in 3T3L1 adipocytes"Endocrinology. 143. 4563-4569 (2002)