2003 Fiscal Year Annual Research Report
膵癌に対するオーダーメイド治療法の開発にむけて-Smad4を用いた遺伝子治療
Project/Area Number |
14571211
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
永井 英司 九州大学, 大学病院, 助手 (30264021)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
水元 一博 九州大学, 大学病院, 講師 (90253418)
田中 雅夫 九州大学, 大学院・医学研究院, 教授 (30163570)
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Keywords | 膵癌 / Smad4 / 遺伝子治療 / 血管新生阻害 |
Research Abstract |
・膵癌は最も予後不良の悪性新生物の1つであり、5年生存率は5%に満たない。膵癌の悪性たる所以は、その高度な増殖能に加え、浸潤・転移能が極めて高いことにあり、これを直接コントロールすることこそが膵癌制圧につながると考えられる。いわゆるTumor dormancy療法の考え方である。この考え方に基づき申請者らはHGFアンタゴニストであり、血管新生抑制因子でもあるNK4を調製し、膵癌遺伝子治療の基礎研究を行ってきた。これまでの実験からHGFの受容体であるc-METを発現している膵癌細胞株を用いたNK4遺伝子治療では局所での膵癌の発育・進展を抑制するのみならず、腹膜播種をも強力に抑制することをつきとめた。しかしながらHGFの受容体であるc-METをすべての膵癌が発現しているわけではなく、癌の特性に応じた治療法つまりオーダーメイドの治療法が必要である。 ・DPC4遺伝子は第18番染色体長腕q21に存在し、Smad4蛋白をコードしている。Smad4は細胞増殖抑制因子であるTGFβのシグナル伝達系の中心的役割を果たしており、その欠失は膵癌の約50%に認められるとされている。我々のこれまでの免疫組織学的検討でも約50%の膵癌で欠失を認めている。 ・これまでの研究でDPC4遺伝子を大腸癌細胞に導入することで、(1)細胞の増殖能が抑制され、(2)urokinase-type plasminogen activator(uPA)の発現を抑制することにより、浸潤能が抑えられることが解ってきている。また最近の研究で(3)Smad4には血管新生抑制作用があることが認められ、以上の知見からSmad4はNK4と並んで膵癌遺伝子治療の有力な候補となり得る。 ・今回の研究は、膵癌に対しオーダーメイドの治療を試みる際の候補としてのSmad4の有効性を検討することを目的とし、以下の項目についで検討した。 (1)ヒト膵癌に対するSmad4遺伝子導入:stable transfectantを作成し、in vitroでの細胞の増殖能・浸潤能について検討 (2)ヒト膵癌に対するSmad4遺伝子治療: a)Smad4を組み込んだアデノウイルスを作成し、in vivoでの腫瘍への感染効率、腫瘍抑制効果について検討した。 b)Smad4組替えアデノウイルス投与による血管新生抑制効果とそれに基づく腫瘍抑制効果について検討した。
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