2003 Fiscal Year Annual Research Report
線溶療法に用られるtPAの脳組織傷害性ならびにその治療に関する研究
Project/Area Number |
14571338
|
Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
加納 恒男 日本大学, 医学部, 講師 (40277413)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
片山 容一 日本大学, 医学部, 教授 (00125048)
|
Keywords | rat / thromboembolic stroke / reperfusion / tissur plasminogen activator / neurotoxicity |
Research Abstract |
脳梗塞患者に線溶療法目的に用いられるtissue plasminogen activator(tPA)が神経毒性を有するとする論文が近年多数報告されている。我々は独自に開発したラット脳塞栓モデルを用いて、線溶療法目的に投与された外因性tPAの神経毒性に関する実験において、以下の知見を平成14年度までに得た。 1 脳虚血導入後に脳血流は基礎値の15%に低下した。脳虚血導入30分後にtPAを投与することにより脳血流は次第に改善し、tPA投与開始2時間後には基礎値の95%まで回復した。 2 tPAを用いた免疫染色では、本実験モデルの虚血領域である線条体ならびに体性感覚野が染色されたことより、脳虚血領域に一致して外因性tRAの血管外漏出が生じていることが明らかになった。 3 虚血側大脳半球におけるtPAの含有量は(ELISA法による)3.8ng/mLであり、非虚血側大脳半球内tPA(0.8ng/mL)とくらべて有意に増加していた。 4 脳虚血導入24時間後のH-E染色では、虚血巣は壊死に陥っている神経細胞が散在性に認められるいわゆるincomplete infarctionの所見であった。 以上の結果より、脳梗塞患者において、tPA投与により脳虚血後早期に血流再開がなされた場合でも、無視できないほどの量のtPAが血管外に漏出していることが示された。 さらに平成15年度には、以下の知見が得られた。 5 電子顕微鏡による組織学的検討では、脳虚血導入30分後にtPAを投与されたラットの、脳微小血管における虚血性の傷害は軽度であった。tPAの血管外漏出の機序は、血管内皮細胞におけるendocytosisの亢進であることが明らかとなった。 6 脳虚血に伴って産生が亢進する、内因性tPAを定量するために、threadモデルを用いて一過性脳虚血後の脳組におけるtPAを定量した。その結果、内因性tPA量はおよそ1ng/mLであった。したがって、脳塞栓モデルにおいて検出されたtPA量の大部分は、線溶療法目的に投与された外因性のtPAであると推測された。 以上より、線溶療法目的に投与された外因性のtPAは、実際に脳虚血巣に漏出しており、その量は内因性のtPAを凌駕するものであることが明らかにされた。
|
Research Products
(1 results)