2002 Fiscal Year Annual Research Report
低濃度局所麻酔薬による増殖因子受容体におけるチロシンキナーゼ活性化作用の研究
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14571459
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
廣瀬 宗孝 京都府立医科大学, 医学部, 助手 (50275228)
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Keywords | チロシンキナーゼ / リドカイン / リン酸化 / 角膜上皮細胞 / 国際情報交換 |
Research Abstract |
これまでの研究で、局所麻酔薬はNaチャネルにおける不活性化ゲートにおける芳香族アミノ酸と陰性電荷アミノ酸が集まったアミノ酸配列に特異的に結合することから、同様のアミノ酸配列を活性化ループにもつチロシンキナーゼに対しても薬理作用をもつ可能性を検討してきた。細胞膜上の受容体型チロシンキナーゼである上皮増殖因子受容体(EGFR)も自己リン酸化部位で類似のアミノ酸配列が見られることから、局所麻酔薬がEGFRのチロシンキナーゼ活性に影響する可能性がある。精製したEGFRを用いたin vitroにおける予備実験では、低濃度リドカインはEGFRのチロシンキナーゼ活性を増加し、高濃度では抑制した。本年度の研究では局所麻酔薬のリドカインのEGFR活性に対する影響を、ヒト角膜上皮細胞(HCEC)を用いてEGFおよび/またはリドカイン(4μM-40mM)を加えて細胞増殖に対する作用を検討した。またEGFR抗体による免疫沈降法とチロシンリン酸化抗体を用いたウェスタンブロット法により、HCECのEGFRにおけるチロシンリン酸化も調べた。結果は4μM,40μMのリドカインによる直接の細胞増殖作用は認められず、低濃度リドカインによる細胞増殖刺激作用は否定された。400μM以上の高濃度リドカインは、EGF刺激によるHCEC増殖を抑制し、EGF刺激によるHCECにおけるEGFRの自己リン酸化も抑制した。高濃度(臨床使用濃度)局所麻酔薬は、HCEC細胞膜上のEGFRのチロシンキナーゼ活性を抑制することにより細胞増殖を抑制することが示唆された。臨床上、角膜損傷後の角膜細胞増殖に対して局所麻酔薬の使用が角膜の修復を遅延させることが知られており、本研究は局所麻酔薬の角膜細胞増殖遅延におけるメカニズムを明らかにした。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] 平田昌史: "リドカインのヒト角膜上皮細胞増殖抑制作用の機序について"日本ペインクリニック学会誌. 9巻・3号. 265 (2002)
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[Publications] Munetaka Hirose: "Mechanism of suppression of insulin signaling with lignocaine"British Journal of Phamacology. 136. 76-80 (2002)