2002 Fiscal Year Annual Research Report
低pH環境下における温熱及び放射線誘導型アポトーシスに関与する遺伝子解析
Project/Area Number |
14571611
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Research Institution | 福井医科大学 |
Principal Investigator |
大坪 俊雄 福井医科大学, 医学部附属病院, 講師 (10223877)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 聡久 福井医科大学, 医学部, 助手 (60334827)
都築 秀明 福井医科大学, 医学部附属病院, 講師 (90236927)
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Keywords | 頭頸部癌 / 温熱 / 低pH / HDAC3 |
Research Abstract |
近年我々はヒト上顎癌細胞株を用い、一過性及び慢性の低pH暴露によって温熱によるアポトーシスが増強されることを報告してきた。しかしながら低pH暴露に関与する細胞内においての遺伝子発現についての詳細は、未だ不明な部分が大半を占める。そこで今回cDNAアレイを用いて、この温熱のpH効果に関与する遺伝子を網羅的にスクリーニングした。その結果細胞内シグナル伝達系・細胞周期・アポトーシスなど細胞のさまざまな機能に関与している遺伝子の発現変化を認めた。これら低pH暴露によって発現が増加している18種の遺伝子のうち、我々は今回histone deacetylase 3 : HDAC3に着目した。この遺伝子はG2/M期での細胞周期停止を誘導し、転写調節に関与する遺伝子である。低pH条件下での温熱刺激が、G2/M期での細胞周期停止を誘導することに合致するため選択した。低pH条件下での温熱刺激時におけるHDAC3の発現は、蛋白レベルでも確認された。そこで我々はアンチセンスRNAオリゴヌクレオチドをデザインし、HDAC3の発現抑制を試みた。その結果、フローサイトメトリーでは低pH条件下での温熱刺激時にHDAC3の発現を抑制すると、低pHと温熱によって誘導されるはずのG2/M期細胞周期停止が解除され、興味あることにアポトーシス誘導が約2倍に増感されることが判明した。コロニー法を用いて細胞の生存率を求めると、低pH条件にHDAC3抑制を加えると、温熱の殺細胞効果が約1オーダー増強されることが明らかとなった。固形癌の内部環境は低pHとなっていることが知られており、これらのひとからHDAC3は頭頸部癌の温熱耐性に深く関与する遺伝子の一つと考えられる。よってこの遺伝子をターゲットとした頭頸部癌の温熱療法における分子標的増感治療の可能性が示された。
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