Research Abstract |
1.眼優位性の要素として重要な知覚優位性と眼位異常との関連を検討するため,視野闘争を用いて外斜視XT10例,間歇性外斜視X(T)10例,外斜位X12例で一眼のみの像を自覚する視認時間を測定した.さらに視認時間の左右差,すなわち,優位時間差によって知覚優位性を2段階(弱度群10秒以下,強度群10秒以上)に分類し解析した.症例の平均年齢は12.4歳で,全例弱視は認められず,大型弱視鏡で明らかな抑制のないことを確認した.視認時間の測定は,一対のレチノメーター(LAMBDA 100 HEINE社)とその固定器具,記録解析用パソコンで構成された装置を用いた.視野闘争刺激図形は5度の円形で45度,135度に傾斜した赤黒の干渉縞(1.8c/deg)である.優位時間差は,XT8.8±4.4秒,X(T)4.4±4.3秒,X1.9±1.6秒で,XT-X(T)およびXT-X間には統計学的有意差を認めた(p<0.05,Mann-WhitneyのU検定).さらに,知覚優位性弱度群の割合は,XT50%,X(T)80%,X100%であり,一方,知覚優位性強度群の割合は,XT50%,X(T)20%,X0%であった.以上の結果より,両眼単一視が妨げられる症例ほど優位時間差の延長,すなわち,強い知覚優位性を示し,知覚優位性は眼位異常に影響されることが示唆された.本実験系では通常の検査では検出されにくい一眼の抑制を優位時問差として定量化できることが明らかとなり,今後の臨床応用が期待される. 2.立体画像鑑視時の視覚疲労を主観評価,融像幅,調節ステップ応答,視覚誘発電位を用いて検討した.大きな両眼視差や時間変動する不連続な視差変化を与えた場合に主観評価の悪化,融像幅・調節応答の低下,視覚誘発電位での潜時延長がみられ,視覚疲労の指標として有用であることが示唆された。
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