2002 Fiscal Year Annual Research Report
胎児尿路閉塞による多嚢胞性異形成腎発生メカニズム解明と胎児治療時期の検討
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14571709
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Research Institution | St. Marianna University School of Medicine |
Principal Investigator |
北川 博昭 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 助教授 (80153097)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 百合子 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 助手 (80318948)
脇坂 宗親 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 講師 (30267596)
小池 淳樹 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 助手 (40308440)
中田 幸之介 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 教授 (70081734)
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Keywords | 胎児手術 / 閉塞性尿路障害 / 多嚢胞性異形成腎 / Potter症候群 |
Research Abstract |
過去の研究から、実験的に羊の胎児の尿路を閉塞することで腎臓の発生に影響を及ぼすことを報告した。また尿路閉塞がおこる時期の相違により異なる腎臓の病理学的な変化が認められ、満期145日の羊では、胎生90日の尿路閉塞では水腎症を認め、胎生60日では多嚢胞性異形成腎(MCDK)を認め、胎生50日では萎縮腎を伴ったPotter症候群様の所見が認められた。病理学的検討から胎仔期、特に胎生60日以前の尿路閉塞では腎に不可逆的な変化が認められ、出生後の治療では腎機能を維持することは難しいと考えた。これらの変化が尿路閉塞後いつ起こるかを観察するために、胎生60日で尿路閉塞を作成し、その後3週間、4週間で胎仔を娩出させ腎の変化を観察した。その結果、すでに閉塞後3週間で初期の病理学的な変化は腎臓に現れており、尿路閉塞によりはじめに起こるのはNephrogenic Zone内の嚢腫であった。これらはネフロン周囲に拡張が認められ、この拡張が近位尿細管の拡張になり、多発した嚢胞形成になる所見が示唆された。異形成腎発生のメカニズムは、まずはじめにNephrogenic Zone内に嚢腫が形成され、これにより新たに形成されるネフロンが障害される。尿路閉塞以前に形成されたネフロンはそのまま順調に腎臓の中心部に向かって発育を続けるが、尿路閉塞がおこってNephrogenic Zone内に形成された嚢腫はその後の新たなネフロン形成を阻害してMCDKへと変化していくものと考えられる。つまり、閉塞時期が遅ければ遅いほどNephrogenic Zoneから正常に形成されたネフロンが成熟して、出生時には腎臓の機能が保たれると考える。しかし、尿路閉塞後3週の早い時期にすでにNephrogenic Zone内は嚢胞形成が認められるため、この時期に胎児手術を行い膀胱羊水腔シャント、あるいは腎盂羊水腔シャントにより閉塞を解除して正常な腎臓の発育を促すことが将来の胎仔手術の適切な手術タイミングと考える。
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