2002 Fiscal Year Annual Research Report
顎運動制御システムの恒常性維持に対する歯根膜受容器の役割を再生医療の観点から探る
Project/Area Number |
14571734
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
前田 憲彦 広島大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 教授 (60049418)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
末宗 節子 広島大学, 歯学部, 教務員 (80112209)
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Keywords | 再生医療 / 咀嚼システム / 三叉神経運動核 / 三叉神経中脳路核 / 歯牙喪失 / 発達・老化 |
Research Abstract |
口腔が栄養摂取のための極めて重要な窓口であるという認識に基づけば、現代社会における咀嚼システムの脆弱化傾向から子供達を守るための基礎的研究を展開することは急務である。同時に、老化に伴う咀嚼システムの崩壊は個人の健康を著しく損なう原因となる。そこで、本年度は、これまでの実績を踏まえて咀嚼システムの発達と老化に対する歯根膜の知覚神経からの入力の重要性をメインに研究を展開してきた。その結果、以下のような研究成果が得られた。 マウスの上下の臼歯の萌出直前、あるいは直後に一側性の抜歯を行い、抜歯側と非抜歯側において咬筋を支配する三叉神経運動核と三叉神経中脳路核のニューロン数を比較した。その結果、未処置のマウスにおいて、咬筋を支配する三叉神経運動核ニューロンと三叉神経中脳路核のニューロンの数は生後180日から減少し始め、生後360日以後には60日齢マウスと比べると、有意に減少することが明かになった。さらに、マウスの臼歯萌出直後(20日齢)に抜歯すると、三叉神経運動核ニューロン数の早期の減少が引き起こされた。さらに、抜歯時期を徐々にずらし、歯根膜喪失による抹消からの入力の低下が咀嚼制御中枢に最大の影響を与える臨界期が存在するかどうかを明らかにする実験を行ったところ、生後30日以後の抜歯処置は、三叉神経運動核のニューロン数に影響を与えないという、この研究分野において極めて貴重な知見が得られた。一方、咬筋に存在する筋紡錘の伸展知覚を支配する三叉神経中脳核のニューロン数においても抜歯による歯根膜入力欠除の影響を調べたところ、三叉神経運動核ニューロンとは異なり、抜歯の影響を全く受けないという極めて興味深い結果を得た。 以上のような研究結果は、将来における咀嚼システムの再生医療に重要な指針を与えると考えられる。
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