2003 Fiscal Year Annual Research Report
口腔顎顔面の組織発生における細胞増殖と分化の切り替えとその調節機構の解明
Project/Area Number |
14571745
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Research Institution | Meikai University |
Principal Investigator |
天野 修 明海大学, 歯学部, 教授 (60193025)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉山 完司 明海大学, 歯学部, 助手 (10171183)
藤井 博子 明海大学, 歯学部, 助手 (30049431)
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Keywords | 熱ショック蛋白 / メッケル軟骨 / 増殖分化 / 発生生物学 / 唾液腺再生 |
Research Abstract |
熱ショック蛋白質(Hsp)は、熱や重金属、エタノールなどのストレス刺激によって誘導される蛋白質である。その中でもHsp25は発生過程における細胞の増殖、分化、細胞死の調節に関わるスイッチの役割を果たすと考えられている。メッケル軟骨は第一鰓弓に発生し、直接下顎骨形成には関与せず、前方部は出生時までに変性・消失する。中間部は蝶下顎靱帯に、後方部はツチ・キヌタ骨になる。その変性・消失の分子機構は不明である。 昨年度のメッケル軟骨前・中間部の変性消失機構に続き、後部の分化および下顎頭軟骨の発生と分化におけるHsp25の時間的空間的局在について調べた。ツチ骨およびキヌタ骨の発生では、他の軟骨内骨化における骨発生のパターンと全く同様の変化を示した。即ち、増殖期・成熟期の軟骨細胞は免疫陰性で、肥大軟骨細胞が強い免疫活性を呈した。下顎頭軟骨はメッケル軟骨とは別に胎生期に発生し、生後発生期に成長するが、離乳期が終了する生後3週齢を境に、Hsp25の発現パターンが変化することを見いだした。その変化が成長速度の変化や咀嚼圧による機械的刺激の変化によるものかどうかを、固さの異なる食餌を与えたマウスで比較検討したところ、柔らかい食餌では離乳期のパターを成獣でも維持し、下顎頭の劣成長を引き起こした。その結果からHsp25が下顎頭軟骨の増殖分化の時期や速度を制御して、下顎骨の成長に大きな影響を与えていることが示唆された。 さらに、唾液腺における腺房細胞の増殖分化の調節とHsp25の関係をさらに明らかにするため、導管の結紮と解除による腺房再生実験モデルを確立し、そのモデルを用いて腺房細胞の再生時におけるHsp25の時間的空間的局在を調べた。現在、症例数を増やしながら最終的な結果を得るべく実験中であるが、導管結紮解除後、3日〜7日に免疫陽性の上皮細胞が再生腺房中に出現し、再生がほとんど終了する14日には免疫活性が消失することがわかった。
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[Publications] 堀内裕子, 天野 修: "ラット顎下腺の腺房再生における27kDa熱ショック蛋白の局在"歯科基礎医学雑誌. 45・5. 312 (2003)
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[Publications] 島田真弓: "発生・成長時のマウス下顎骨関節頭軟骨における25kDa熱ショック蛋白質(Hsp25)の局在とその役割"金沢大学十全医学雑誌. 111・5. 256-266 (2002)
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[Publications] 天野 修: "口腔顎顔面の組織発生における幹細胞増殖因子の多様な役割"鶴見大学歯学部顎機能研究センター 第2回公開シンポジウムプロシーディング. 103-105 (2003)