Research Abstract |
本年度の研究では,初代培養唾液腺細胞,唾液腺癌細胞株(HSG, HSY, TYS),HSG細胞を脱メチル化剤で処理することにより得られた細胞株(HSG-AZA1),SV40mtantDNAの導入により不死化した唾液腺細胞株(NS-SV-DC, NS-SV-MC)および唾液腺良性腫瘍(多形性腺腫,ワルチン腫瘍),唾液腺悪性腫瘍(腺様嚢胞癌,腺癌),正常唾液腺におけるmaspinの発現を検索し,p53との関連性につき検討した。その結果,初代培養唾液腺細胞,HSG, HSG-AZA1, HSY, TYS, HSG-AZA1およびNS-SV-DC細胞において,細胞質にmaspinの発現を認めた。NS-SV-DC細胞はmaspinの発現量が低下しており,NS-SV-MC細胞はmaspinを発現していなかった。また,初代培養唾液腺細胞では,筋上皮細胞にmaspinの発現を認めた。HSG, HSG-AZA1およびHSY細胞のp53は,core domainに変異は見られず転写活性化能を保有していたが,NS-SV-DCとNS-SV-MC細胞のp53は,SV40T抗原との結合により転写活性化能が低下していた。TYS細胞のp53は,core domainに点変異を有しておりP53の分解遅延を認めたが,転写活性化能を保有していた。正常唾液腺,多形性腺腫およびワルチン腫瘍では,上皮細胞の細胞質にmaspinの発現を認め,P53は検出されなかった。また,正常唾液腺および多形性腺腫では,筋上皮細胞にmaspinの高発現を認めた。腺様嚢胞癌および腺癌では,腫瘍細胞にmaspinの発現を認めず,P53が染色される腫瘍細胞が散在していた。以上の結果より,唾液腺細胞および唾液腺良性腫瘍はmaspinを発現していることが示された。また,唾液腺細胞においても,maspinの発現にp53が関与していることが示唆された。
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