2002 Fiscal Year Annual Research Report
PFG-NMR法による機能性錯体・高分子および生体分子の会合構造に関する研究
Project/Area Number |
14571995
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
関 宏子 千葉大学, 分析センター, 助手 (60114245)
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Keywords | PFG-NMR / HMBC / 分子クラスター / 分子拡散 / 水素結合 / 生体分子 / 緩和時間 / パルスシーケン |
Research Abstract |
固体・溶液中で働く分子間相互作用、特に水素結合に関しての研究は生化学および医学の分野においても重要であり、NMRはそれらの解明に大きく貢献してきた。本研究ではX線解析より得られた水素結合情報をもとに、NMRを水素結合のプローブとして用い、得られた拡散係数からそれらの溶液構造を特定する手法について検討した。なお、サンプルには生体ホルモンであるステロイド化合物を用いた。X線解析結果から、カルボニル及び水酸基に複数の水素結合を持つ連鎖構造、1対のカルボニルと水酸基で形成されるhead-to-tail型鎖状構造、さらに周囲の分子と水素結合を持たないものが観測された。さらにNMRによる拡散係数測定の結果をX線の結果と比較したところ、固体中(結晶中)で分子間水素結合の強さによって拡散係数が異なる結果が得られた。つまり、分子間水素結合が複数見られたものに関しては拡散係数が小さく、反対に分子間水素結合が1種類かそれ以下しか見られず、結晶中で鎖状構造をとっているものは拡散係数が大きい傾向がみられた。この原因としては、水素結合が1本、もしくは無いものは周囲との相互、作用が小さく、分子は動きやすくなるので拡散係数が大きくなる一方、水素結合が複数あるものについては、周囲との相互作用のため分子の動きが鈍くなり、拡散係数が小さくなると考えられる。 以上より、X線解析から判明した結晶中の水素結合形式は、NMRによる拡散係数に反映されていることが分かった。つまり、固体と溶液における水素結合状態についての相関が認められた。よってここで用いたステロイド化合物は溶液中で結晶構造に見られる水素結合を保っていると推定され、さらに結晶構造中での分子のパッキングも拡散係数からある程度推測できる。このようにNMRを水素結合のプローブとして用いることにより、2次元ネットワークが推測できることを見いだした。定量的取り扱いに関し,現在なお検討中である.
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Research Products
(1 results)
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[Publications] 関宏子, 敷井和彰, 坂本茂, 山口健太郎: "The crystal packing probe of hydrogen bond interaction by diffusion NMR"アメリカ化学会誌. (投稿準備中).