2002 Fiscal Year Annual Research Report
癌の浸潤、転移における細胞外マトリックス・テネイシンXの役割
Project/Area Number |
14572048
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
松本 健一 北海道大学, 大学院・薬学研究科, 助教授 (30202328)
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Keywords | 細胞外マトリックス / 癌 / マトリックスメタプロテアーゼ |
Research Abstract |
これまでに私は、浸潤、転移に深く関わっている分子であるマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)、この中でも特にMMP-2,MMP-9が、テネイシンX欠損(TNX-/-)マウスにおいて促進していることを明らかにし、このことがTNX-/-マウスにおいて癌の浸潤、転移を引き起こすことを明らかにした。本研究では、TNX欠損によるMMP-2,MMP-9活性促進の分子メカニズムを明らかにする。 まず、生後1日齢のマウスより、線維芽細胞を樹立し、TNX-/-細胞で、MMP-2,MMP-9活性の促進を検出できる実験系の確立を行った。各細胞を、collagen Iコート上での培養やcollagen Iゲル内での3次元培養をすることにより、TNX-/-細胞での、MMP-2,MMP-9活性促進を検出することができた。次にTNX欠損によるMMP-2,MMP-9の活性促進に至るシグナル伝達系を明らかにするために、ERK経路、JNK経路、P38経路を遮断する各種薬剤で処理後、MMP活性を調べた。その結果、これらの薬剤では、TNX-/-細胞におけるMMP活性の促進を抑制できないことより、これら3経路はTNX欠損によるMMP-2,MMP-9活性促進には関与しないことが明らかとなった。またMMP-2遺伝子のプロモーター領域のdeletionクローンのレポーター遺伝子へのクローニングを行った。今後TNX欠損によるMMP-2遺伝子発現に必要な、cisエレメントの同定を試みる予定である。 また、MMPの発現誘導を解明する上で、どうしても必要であるTNX受容体の同定を、expression cloning法を用い試みた。その結果CD81を含む数種の細胞膜タンパク質の同定を行い、現在その結合を生化学的に調べている。 また、TNX-/-マウスに見られる、メラノーマの浸潤、転移の促進を、TNXの供給により抑えることができるか否かを調べる研究に関しては、TNX遺伝子をアデノウイルスに組み込んだベクターを作成中である。これまでにTNXのドメインを欠失した2種の変異体TNXを持ったアデノウイルスベクターの作成を完了した。
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[Publications] Masahiko Okada et al.: "DJ-1, a target protein for an endocrine disrupter, participates in the fertilization in mice"Biol. Pharm. Bull.. 25巻. 853-856 (2002)
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[Publications] Ken-ichi Matsumoto et al.: "Invasion of melanoma in double knockout mice lacking tenascin-X and tenascin-C"Jpn. J. Cancer Res.. 93巻. 968-975 (2002)
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[Publications] Ken-ichi Matsumoto et al.: "Distribution of extracellular matrix tenascin-X in sciatic nerves"Acta Neuropathol.. 104巻. 448-454 (2002)
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[Publications] Takeharu Minamitani et al.: "Adhesive defect in extracellular matrix tenascin-X-null fibroblasts : a possible mechanism of tumor invasion"Biol. Pharm. Bull.. 25巻. 1472-1475 (2002)