2005 Fiscal Year Annual Research Report
細菌を用いたアンチポーターの機能と膜への組み込み装置の研究
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14572051
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Research Institution | Niigata University of Pharmacy and Applied Life Sciences |
Principal Investigator |
中村 辰之介 新潟薬科大学, 薬学部, 教授 (20114308)
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Keywords | カチオン / 腸炎ビブリオ / アンチポーター / 膜タンパク質 / NhaP / K^+毒性 |
Research Abstract |
ゲノムの全塩基配列が決定された腸炎ビブリオを用いて、これまでに報告があるNa^+/H^+アンチポーターとコードされたタンパク質のアミノ酸配列に相同性がある遺伝子を検索したところ、12個の遺伝子が見つかった。これらの遺伝子をPCRにより取り出し、タグを付けた形で発現系プラスミドにクローニングした。塩基配列に変異が無いことと、タンパク質の発現を確認した。これらのプラスミドを、大腸菌の3種類のNa^+/H^+アンチポーターNhaA、NhaB、ChaAをコードする遺伝子全てを欠失させた変異株TO114に導入した。TO114はNa^+感受性である。12種類の遺伝子の中で、培地のpHが中性では、nhaAとnhaBが、アルカリ性ではnhaAだけがTO114をNa^+を含む培地での生育を補った。次に、腸炎ビブリオをアルカリ条件で膜透過性アミンを加えると、細胞内からK^+の流出が観測できた。従って、腸炎ビブリオにはK^+/H^+アンチポーターが活性があることがわかった。これまでに高等植物ではNa^+/H^+アンチポーターがK^+/H^+アンチポーター活性を持つことが示されていたので、上記12種類の遺伝子の中にK^+/H^+アンチポーターがあるかもしれないと考え、これらをTO114に入れて、アルカリ条件で膜透過性アミンを加えて、濃度勾配に逆らったK^+の排出が見られるか検討した。残念ながら、いずれの場合も濃度勾配に逆らったK^+の排出は測定できなかった。大腸菌は活性の強いK^+取り込み系(Kdp系、Kup系、Trk系)が存在する。これらのK^+取り込み系が、K^+の排出活性を隠している可能性があると考え、K^+取り込みの遺伝子を潰したLB650に12種類の遺伝子を導入して、アルカリ条件で膜透過性アミンを加えて、濃度勾配に逆らったK^+の排出が見られるか検討したところ、驚いた事にnhaA、nhaB、nhaP2の3種類の遺伝子がK^+排出活性を持っていることが明らかとなった。従って、腸炎ビブリオのNa^+/H^+アンチポーターNhaAとNhaBは、Na^+と同時にK^+にもイオン選択性があり、Na^+/(K^+)/H^+アンチポーターであることがわかった。さらに、腸炎ビブリオのNhaP2はK^+(に選択的な)/H^+アンチポーターであることがわかった。これまで、K^+(に選択的な)/H^+アンチポーターはほとんど報告が無く、細菌でK^+(に選択的な)/H^+アンチポーターが明らかとなったのは本研究が初めてである。NhaA、NhaB、NhaP2の活性は、大腸菌TO114に発現させ、反転膜小胞を作り、キナクリンの蛍光強度の変化(小胞内のH^+濃度の増減)により間接的にアンチポーターを測定する方法でも、上記結果を支持する実験結果が得られた。興味深い事に、濃度勾配に逆らってK^+を排出するK/H^+アンチポーター活性は、大腸菌にも検出できた。現在、大腸菌のK/H^+アンチポーター活性は何が担っているか検討している。本研究で、これまで毒性が無いと思われて来たK^+にも、特に外部pHがアルカリ性では毒性があり、K/H^+アンチポーターはK^+毒性を軽減させる働きがあることが示された。
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Research Products
(7 results)