2002 Fiscal Year Annual Research Report
血清レクチンの抗腫瘍活性を誘導する糖鎖リガンドの構造解析
Project/Area Number |
14572054
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
川嵜 伸子 京都大学, 医療技術短期大学部, 教授 (70077676)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川嵜 敏祐 京都大学, 薬学研究科, 教授 (50025706)
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Keywords | 血清レクチン / マンナン結合タンパク質 / ヒト結腸がん細胞 / マンノース結合タンパク質 / 抗腫瘍活性 / 生体防御因子 / 糖鎖リガンド / 赤血球Band3糖タンパク質 |
Research Abstract |
血清マンナン結合タンパク質(MBP)は、マンノース/N-アセチルグルコサミン/フコースに特異的なC-型レクチンで、がん細胞増殖抑制作用を有する。本研究は、MBPによる制がん作用の標的分子となるMBPリガンドをヒト結腸がん細胞より単離し、リガンド糖鎖の構造解析とその糖タンパク質の同定を行うことを目的とする。 【1】ヒト結腸がん由来細胞SW1116細胞よりMBPの糖鎖リガンドを単離し、その化学的性質を解析した。^3Hグルコサミンで代謝標識したSW1116細胞より糖ペプチドを調製し、ヒドラジン分解後、遊離した糖鎖をPA標識し、MBPカラムに結合する画分を単離した。還元末端糖/単糖分析の結果、MBPリガンド糖鎖画分は、主にN型糖鎖から成り、N-アセチルグルコサミン、ガラクトース、フコースが主成分であった。また、末端あたりの各単糖は、ほぼ1:100であり、高分子糖鎖であることが分かった。この画分について、エンドβガラクトシダーゼ消化、あるいはフコースを除去する酸処理をした結果、分子サイズの減少とともに、MBPカラムヘの結合性をほとんど消失した。MBP糖鎖リガンドは、長鎖のポリN-アセチルラクトサミン構造を骨格とし、フコース残基が重要であることが推定された。 【2】MBP糖鎖リガンドの構造解析法を確立するために、比較的似た高分子ポリラクトサミン糖鎖を有する赤血球膜の糖タンパク質Band3より、【1】と同様に、高分子量PAオリゴ糖鎖を調製し、解析した。糖分析の結果、この糖鎖画分はN型糖鎖から成り、N-アセチルグルコサミン、ガラクトースが主成分であるが、フコース含量は少ないことが分かった。エンドβガラクトシダーゼ消化により、分子サイズが減少し、また、質量分析の結果、[ガラクトース-N-アセチルグルコサミン]の8回繰り返し構造が検出され、ポリN-アセチルラクトサミン構造の存在が示された。しかし、Band3糖鎖は、MBPカラムに結合しなかった。この差異はフコース含量の差によるものと考えられ、MBPリガンドにおけるフコース残基の重要性がここでも示唆された。
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[Publications] Uemura K, Saka M, Nakagawa T, Kawasaki N, Thiel S, Jensenius JC, Kawasaki T: "L-MBP is expressed in epithelial cells of mouse small intestine"Journal of Immunology. 69・12. 6945-6950 (2002)
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[Publications] Kawasaki N, Inoue R, Yamada K, Shibayama S, Arai T, Kawasaki T: "Characterization of Oligosaccharide Ligands for a Serum Lectin, Mannan-binding Protein, which Induce an Anti-tumor Activity against Human Colon Cancer"Glycobiology. 12・10. 661 (2002)
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[Publications] Kawasaki N, Inoue R, Yamada K, Shibayama S, Kawasaki T: "Oligosaccharide ligands on human colon cancer cells associated with the anti-tumor activity of a serum lectin, MBP"XVII International Symposium on Glycoconjugates, Abstracts. 52-53 (2002)
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[Publications] 川嵜伸子: "廣川タンパク質化学 第5巻 血漿タンパク質II 31.コングルチニン(分担執筆)"廣川書店. 398(387-394) (2002)