2004 Fiscal Year Annual Research Report
肺動脈におけるメカノトランスダクション機構の解明と肺高血圧症への実験治療学的応用
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14572059
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
田辺 由幸 静岡県立大学, 薬学部, 助手 (10275109)
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Keywords | メカニカルストレス / 肺高血圧 / ホスホリパーゼA2 / エイコサノイド / PGH_2 / インテグリン / 肺動脈 / アラキドン酸カスケード |
Research Abstract |
循環系難治疾患である肺高血圧症では、肺動脈緊張性の増大と肺循環組織再構築に伴う慢性的な血行力学因子の変動を伴う。本研究の目標は、肺動脈の力学刺激応答機構を標的にした同病態の薬物治療に新たな方向性を提案することである。 これまでの成果から、伸展誘発性のエイコサノイド産生に関してインテグリン依存性の違いがアラキドン酸カスケードの最上流酵素ホスホリパーゼ(PL)A_2分子種の違いによると想定した。そこで、正常家兎ならびにモノクロタリン誘発性肺高血圧(MCT-PH)ラットの肺動脈の伸展誘発性異常収縮に対する分泌型(s)PLA_2の関与を調べた。sPLA_2特異的阻害薬インドキサム(塩野義製薬)は、正常家兎肺動脈の伸展誘発性の非転換型PGH_2産生と収縮を消失させた。また、MCT-PHラットの肺動脈での特定のsPLA_2アイソフォームの発現増大を見いだした。更に、伸展により病的性質である律動性収縮の発生時には非転換型PGH_2が高レベルで産生されていること、インドキサムにより同異常収縮が消失することを明らかにした。以上は肺動脈の緊張性制御機構の異常が実際の病態においても関与していることを示唆する。 平行して、アンギオテンシンII受容体(AT1)が、リガンド非依存的に力学刺激のみで活性化されることから、マウスが低酸素暴露時に肺高血圧を発症する過程において、同受容体拮抗薬オルメサルタン(OLM:三共)による実験治療を行った。同薬物は右心室でのERK/MAPキナーゼ活性化には無効だった。また、肺組織での同キナーゼ活性化およびインターロイキン(IL-)6発現上昇はOLM投与によりほぼ完全に抑制されたが、肺動脈の肥厚には無効であった。以上の結果から、AT1を介したERKの活性化は、肺高血圧症における組織再構築には寄与が少ないものの、付随するIL-6主導型の前炎症状態の発現に関与することが示唆された。
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Research Products
(5 results)