2003 Fiscal Year Annual Research Report
神経栄養因子としてのGLP-1の役割の解明と神経変性疾患への応用
Project/Area Number |
14572074
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
岡 淳一郎 東京理科大学, 薬学部, 教授 (40134613)
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Keywords | 神経栄養因子 / GLP-1 / GLP-2 / 学習記憶 / 頭部外傷 / 神経損傷 / アスピリン / 炎症 |
Research Abstract |
昨年度は、内在性GLP-1が培養海馬神経細胞や脊髄神経細胞の神経突起の長さだけでなく分枝にも影響する神経栄養因子であることを報告した。この作用の臨床応用を考える上から、今年度は、GLP-1及び同じ前駆体からともに産生されるGLP-2が成熟後の脳機能障害を改善させる可能性について検討した。 1 βアミロイド蛋白による遅発性学習記憶障害およびシナプス長期増強阻害は、GLP-1投与により改善された。スコポラミンによる学習記憶障害には無効であった。 2 頭部外傷性意識障害モデルマウスでは、頭部外傷負荷3日目から学習記憶障害が現れ、10日目でも同様に障害が持続している。GLP-1またはGLP-2を外傷負荷10分後に脳室内投与すると、学習記憶障害の発症が抑制された。外傷の翌日に投与しても無効であった。外傷負荷10分後にアスピリンを皮下投与すると学習記憶障害が抑制された。インドメタシンは無効であった。したがって、外傷後の脳内では炎症性の反応が起きていて、これが学習記憶障害の原因の一つになっている可能性が考えられる。炎症性サイトカインであるIL-1βがGLP-2投与後に減少する傾向がみられたことから、学習記憶障害改善効果の一部は頭部外傷直後の脳内炎症反応の抑制に起因するものと考えられる。神経損傷修復の組織学的証拠は得られていないが、GLP-1及びGLP-2が頭部外傷後の遅発性脳機能障害発症に対する予防効果があることが明らかになった。 3 本研究より、GLP-1及びGLP-2が神経変性や損傷による機能障害に対して治療効果をもつことが示された。
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[Publications] Nagai, Y., Tsugane, M., Oka, J.-I., Kimura, H.: "Hydrogen sulfide induces calcium waves in astrocytes"The FASEB Journal, express article. 10.1096(published online January. 20, 2004). 03-1052fje (2004)
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[Publications] Shimizu, S., Honda, M., Tanabe, M., Oka, J.-I., Ono, H.: "Endogenous GABA does not mediate the inhibitory effects of gabapentin on spinal reflexes in rats"Journal of Pharmacological Sciences. 94・2. 137-143 (2004)
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[Publications] 岡 淳一郎: "薬の作用を考える〜抗痴呆薬の探索〜"科学フォーラム. 2003・4(通巻226号). 13-17 (2003)
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[Publications] 岡 淳一郎: "脳の病気と治療薬(1)"科学フォーラム. 2004・1(通巻235号). 12-16 (2004)
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[Publications] 岡 淳一郎: "脳の病気と治療薬(2)"科学フォーラム. 2004・2(通巻236号). 17-21 (2004)