アミロイド形成蛋白のイオンチャネル形成と神経毒性発現を阻害する物質の探索

2003 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 14572106
• Research Institution: Kyushu University of Health and Welfare
• Principal Investigator: 川原 正博 九州保健福祉大学, 薬学部, 教授 (40224828)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 木葉 敬子 九州保健福祉大学, 薬学部, 助手 (00369175)
• Keywords: アルツハイマー / プリ / パーキンソン / カルシウムホメオスタシ / 亜鉛 / 高次構造 / 細胞死 / チャネル

Research Abstract

本研究では、アルツハイマー病・βアミロイド蛋白、プリオン病・プリオン蛋白など、神経疾患の発症に重要な働きを持つアミロイド蛋白に共通した神経細胞死メカニズムを探り、その毒性を阻害する物質を探索することを目的とする。これまでに、βアミロイド蛋白、プリオン蛋白が神経系由来の細胞株であるGT1-7細胞の細胞膜に直接結合し、チャネルを形成することによって、細胞内カルシウムホメオスタシスの異常を引き起こし、最終的に神経細胞死を引き起こすことを明らかにしてきた。本年度は、この研究をさらに進め、アミロイド蛋白による細胞内カルシウム動態の異常について詳細に解析した結果、すべての残基がD-アミノ酸で構成されるβアミロイド蛋白(D-Aβ)でも、正常のβアミロイド蛋白同様な細胞内カルシウム流入が生じることを見いだした。さらに、この細胞内カルシウム流入は、様々な伝達物質のアンタゴニストやチャネルブロッカーでは阻害されたいことも見いだした。これらは、βアミロイド蛋白による細胞内カルシウム流入が、膜への直接作用によるものであることを強く示すものである。さらに、βアミロイド蛋白、プリオン蛋白によるカルシウム流入は、培養ラット海馬神経細胞でも生じることを明らかにした。また、パーキンソン病脳で蓄積するαシヌクレインの断片ペプチドであるNACも同様なカルシウム流入を引き起こしたことから、これらの疾患には、アミロイド形成蛋白によるカルシウムホメオスタシスの異常が関与するという仮説を強く裏付ける結果が得られた。さらに、本研究の派生過程に置いて、亜鉛イオンやアルミニウムイオンがβアミロイド蛋白等の高次構造変化を引き起こすことに着目し、これによる神経細胞死メカニズムを検討した。現在、これらの無機イオンの作用とアミロイド蛋白の相互作用を検討中である。

Research Products

• [Publications] Masahiro KAWAHARA: "Disruption of calcium homeostasis in the pathogenesis of Alzheimer's disease and other conformational disease"Current Alzheimer Research. 1. 87-96 (2004)
• [Publications] Masahiro Kawahara: "Aluminum-induced conformational change and the pathogenesis of Alzheimer's disease"J.Health Science. 49. 341-347 (2003)
• [Publications] Kawahara M., Kato-Negishi M., Hosoda R., Imamura L., Tsuda M., Kuroda Y.: "Brain-derived neurotrophic factor protects cultured rat hippocampal neurons from aluminum maltolate neurotoxicity"J.Inorganic Biochemistry. 97. 124-131 (2003)
• [Publications] Konoha K., Imamura L., Tsuda M., Kawahara M.: "Aluminum maltolate inhibits brain-derived neurotrophic factor induced intracellular free calcium elevations in cultured rat hippocampal neurons"Biomed.Res.Trace Elements. 14. 173-187 (2003)
• [Publications] 川原正博: "アルミニウムの毒性とアルツハイマー病"科学. 74. 77-80 (2004)
• [Publications] Hosoda R., Nakayama K., Kato-Negishi M., Kawahara M., Muramoto K., Kuroda Y.: "Thyroid hormone enhances the formation of synapses between cultured neurons of rat cerebral cortex"Cellular and Molecular Neurobiology. 23. 895-906 (2003)
• [Publications] 川原正博, 黒田洋一郎(分担執筆): "よくわかるアルツハイマー病-実際に関わる人のために-"永井書店. 223-235 (2004)