2005 Fiscal Year Annual Research Report
IgGの糖鎖修飾によりマクロファージの貪食能を制御する技術の開発
Project/Area Number |
14572186
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Research Institution | Showa University School of Medicine |
Principal Investigator |
木村 聡 昭和大学, 医学部, 助教授 (30255765)
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Keywords | IgG / 糖鎖 / 臍帯血 / Ischemia Modified Albumin |
Research Abstract |
ヒト血清のIgGにはアスパラギン結合型の糖鎖がFc部分に付着しており、IgGの三次元構造維持に与っている。また生体防御反応で重要な役割を果たすマクロファージは、IgGが結合した抗原を貪食するに当たり、IgGのFc部分の糖鎖構造が貪食活性に強く影響することが知られている。一方、新生児の免疫能は、母体から胎盤を介して供給されるIgGに多くを依存するが、すべてのIgGが無条件に胎盤を通過するわけではない。胎児の血液は分娩時に得られる臍帯血から、比較的多量に、非侵襲的に得ることができ、我々を含め種々の研究に応用されている。 昨年度までに我々は、患者の同意を得て採取した臍帯血に、健常成人(非妊婦)とは異なるタイプの糖鎖構成比を持つIgGを大量に臍帯血に認め報告した。この糖鎖を持つIgGは、Fc部分を介したマクロファージの貪食能が通常の糖鎖を持つIgGよりも高いことが知られている。我々は昨年度までの一連の研究で、この免疫活性が高い糖鎖を持ったIgGが、胎盤の透過性が高いことを解明した。すなわち、糖鎖の差異がIgGの胎盤移行性だけでなく、新生児のマクロファージを介した免疫能にも影響を与える。逆にこの糖鎖が少ないIgGは、子宮内発育遅延や胎盤機能障害症例に多く認められる傾向が判ってきた。 今年度はこの臍帯血IgGとともに、虚血性病変によって同時に誘導される変性アルブミン(Ischemia Modified dAlbumin;IMA)との関わりについて解析を進め、以下のような結論を得た。すなわち、子宮内発育遅延や新生児仮死など、合併症が認められた胎児の臍帯血では、IMAの濃度が高く、健常成人における濃度も有意に凌駕していた。その値の分布は、前述のIgG糖鎖変化と対応しており、免疫学的にも興味が持たれた。我々が用いたIMAの測定方法は、2時間以内に値が得られる比色法であり、将来IMAやIgG糖鎖分析による胎児胎盤機能や新生児合併症の予後判定、治療指標に臨床応用が期待される。
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