2004 Fiscal Year Annual Research Report
日本文化において末期がん患者を看取る看護者の感情労働に関する研究
Project/Area Number |
14572218
|
Research Institution | The University of Shiga Prefecture |
Principal Investigator |
豊田 久美子 滋賀県立大学, 人間看護学部, 教授 (30252505)
|
Keywords | 感情労働 / 末期がん患者 / 看取り / 看護師 |
Research Abstract |
日本の一般病棟、緩和ケア病棟において末期がん患者を看取る看護師にインタビュー調査、参加観察を行い、<うそをついてはいけない><患者の思いに共感すること><穏やかな気持ちでいてもらいたい><患者の死を悲しむこと>の4つの感情規則を見出した。末期がん患者をケアする看護師は、ごまかしのない共感的理解の中で関係性を形成、維持し、穏やかに過ごしてもらい(家族との関係、やりたい事を行う、症状の緩和)、その死を心から悲しむという感情ワークをしている。それゆえ、とまどい、無力感、怒り、腹立ち、後悔などといった感情を抱きやすい状況にあり、特に、多くの看護師は看取り後にケアに対する看護評価が行いにくいという困難性を抱えている。 これらの結果は、都市、地方の地域性には大きな違いは見られず、(1)看取りの場(2)がん告知の状況(3)施設の緩和ケアに対する文化と組織的取り組み(4)ナースの経験年数(5)個人的体験が大きく関与している。一般病棟においては物理的、時間的制約のなかで十分にかかわれないことや緩和ケアが不十分であるという認識、緩和ケア病棟では患者との出会いと時間の限界において十分な関係が創れぬまま看取らなければならないこと、死が日常的に存在することやその慣れに対する感情ワークが、さらに看護師の経験年数が増すにつれ表層演技から深層演技に移行する傾向、また看護師が自分の家族と死別するという個人体験によっても感情ワークが変化していた。 イギリス、豪州においては患者への告知や自己決定、緩和ケアのシステム(一般病棟から在宅、在宅から緩和ケア病棟で症状コントロールを行い在宅へ)が整っており、さらにナースのメンタルヘルスコントロールのためのカウンセリングシステムも行われている点が日本と大きく異なっている。そのことが感情ワークに違いを生み出している。 看護基礎教育において、看護の感情労働のありようとその意味などに対する教育と、臨床において、組織的なカウンセリング体制の重要性が示唆された。
|
Research Products
(1 results)