Research Abstract |
本研究では,学校と地域の警察および薬剤師と連携した薬物乱用防止教室ための教育プログラムDrug Abuse Resistance Program(以下,DARPと称す)を作成し,岩手県の10高校を対象に,準実験的研究法で介入評価研究を行った。DARPの主な特徴は,(1)薬物の専門家である薬剤師,防犯の専門家である警察職員,教育の専門家である教員がそれぞれの専門性を生かしながら連携する,(2)薬物乱用を誘う手口や断る方法について,選ばれた教員と生徒の演技によってロールモデルを示す,(3)生徒たちに人気のある音楽やタレントが登場するビデオを導入部分で用いる等である。調査内容は,薬物乱用に関する知識や意識(薬物乱用に対する印象薬物を使うことについての考え),薬物乱用防止のための自己効力感,薬物乱用防止のための社会的支援(友人,家族,教師,警察関係者・薬剤師等の専門家)等である. 薬物乱用防止に関する知識については,男女とも,実験群と対照群ともにほぼ同様の効果が認められた。薬物乱用に関する意識については,いくつかの項目において,男女とも,実験群で効果が認められたが,対照群では効果が認められなかった。薬物乱用防止のための社会的支援については,友人の支援において,男女とも,実験群で効果が認められた。しかし,対照群では,男子において,介入直後に効果が認められただけであった。薬物乱用防止のための自己効力感については,男子では,両群とも効果が認められなかったが,女子では両群ともに効果が認められた。 従来から行われてきた薬物乱用防止教室は,薬剤師あるいは警察職員が単独で講演する方式がほとんどであった。それに対して,DARPは,薬剤師,警察職員,教員がお互いに連携をとり,生徒も参加しながら進める薬物乱用防止教室である。本研究では,DARPの教育効果について,従来の方式による教育プログラムと比較して評価した。その結果,介入3ヶ月後において,いくつかの項目について,従来の教育プログラムよりも,DARPの方がより効果を期待できることが示された。こうした効果は,教科での学習など系統的かつ継続的な学校教育とあわせて行うことにより,さらに高まるものと思われる。
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