2004 Fiscal Year Annual Research Report
運動技能習得における動きの変容と心の変容が相互に及ぼす影響
Project/Area Number |
14580027
|
Research Institution | Aichi University of Education |
Principal Investigator |
筒井 清次郎 愛知教育大学, 教育学部, 助教授 (00175465)
|
Keywords | 自己教育力 / 体育授業 / 運動学習 / 運動認識 / ヤリ投げ |
Research Abstract |
運動学習の短期的な目標は、運動技能の習熟であり、そのためには、効率の良い学習方法を指導者が用いるべきである。ただし、学習者は、いずれ自分自身による問題解決を要求される時が来る。その際に必要とされるものは、問題解決能力であり、それを支える知的好奇心や有能感であろう。それらの育成も運動学習において保証される必要があると考えられる。 そこで、自分で課題を見つけ、自ら解決することによって、学習者の運動、認識や意識はどのように変容していったのかを追跡することを今年度の研究目的とした。被験者は、女子大学2名であった。ヤリ投げが習得すべき課題として用いられた。学習者は、他者観察や自己分析に基づいて未熟な動作を修正し、4つの技能ポイントを獲得し、目標距離20mまでヤリを投げることができた。その4つの技能ポイントとは、 (1)耳の側をヤリが通過しなければならない、(2)手首でヤリを押し出すことが必要である、(3)最適な投射角が獲得されねばならない、(4)助走によるヤリの投射速度が増加しなければならない、であった。 この試行錯誤を繰り返す中で、学習者の運動認識が高まっていった。この自己学習による方法(自分で課題を見つけ、自ら解決する)は、教師主導の方法よりも、習得までに多くの時間を要したものの、被験者は、技術習得に留まらず、有能感、知的好奇心、及び、身体に対する気づきといった、今後の社会生活で大切になるものを習得させることができたと思われる。運動学習では技能習得の効率化は重要ではあるが、時には、今回のように、学習者自身による問題解決の場を設定することも必要であると考えられる。 また、学習者が目標にたどり着くまでに感じたことや、工夫点がそれぞれ異なっていることが明らかになった。このことは、少なくとも授業レベルにおいては、目標にたどり着く道はいくつもあることと、学習者の先行経験がそれに大きく関わっていることが改めて示された。これは、運動学習における一斉指導の難しさを今更ながら示唆するものであった。
|
Research Products
(3 results)