2004 Fiscal Year Annual Research Report
抗酸化能力が動脈コンプライアンスに及ぼす影響-加齢および運動習慣との関係から-
Project/Area Number |
14580028
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
伊藤 宏 名古屋工業大学, 工学研究科, 助教授 (10203168)
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Keywords | 活性酸素種 / 動脈硬化 / MDA-LDL / reduced glutathione / glutathione reductase |
Research Abstract |
活性酸素種は血管内のLDLコレステロールを酸化、変性させ、動脈硬化を誘発するためmalondialdehyde-modified LDL(MDA-LDL)に代表される酸化LDLは動脈硬化の指標として注目を集めている。一方、血中の活性酸素を消去する能力、すなわち抗酸化能力は、LDLの酸化を防いで動脈コンプライアンスの維持に大きく関与すると考えられるが、これまでに血中の抗酸化能力と酸化LDLとの関係については明らかでない。本年度は、健康な高齢者を対象に、抗酸化能力指標としての血中reduced glutathione (GSH)濃度およびglutathione reductase(GR)活性とMDA-LDL濃度との関係について検討した。 被験者は56名の健康な高齢女性(61±1.7歳,mean±SD)で、過去に心臓血管系の病歴のある者や血中脂質およびリポ蛋白濃度に異常がある者は除外した。被験者全員について、万歩計による日常の活動量(steps/day)を調べた。また、安静時に正中皮下静脈から採血を実施し、血漿中の総コレステロール(T-C)、HDLコレステロール(HDL-C)、MDA-LDL、GSH濃度およびGR活性を測定した。 その結果、血漿MDA-LDLとGR活性の間には有意な負の相関関係(r=-10.603,p<0.001)が認められたが、MDA-LDLとGSH濃度との間には有意な相関が見られなかった。また、活動量とGR活性間でr=0.556(p<0.001)、活動量とGSH濃度間でr=0.614(p<0.001)と有意な相関が認められた。 以上の結果、血中のグルタチオン系の抗酸化能力は日常の身体活動により高まること、また、特にGR活性が血管内の酸化LDLの生成を抑制し動脈硬化予防に貢献する可能性が示唆された。
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