2004 Fiscal Year Annual Research Report
公共性の再構築からみた体育・スポーツのシステム再編に関する研究
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14580036
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
菊 幸一 筑波大学, 大学院・人間総合科学研究科, 助教授 (50195195)
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Keywords | 公共性 / 体育 / スポーツ / 国民体育大会 / スポーツ振興計画 / 政治課題 / 生活課題 / 文化としてのスポーツ |
Research Abstract |
最終年次となる本研究3年次の主な目標は、スポーツ需要の実態と供給側の論理をどのように結びつけて「公共性」を担保していくのかについて、従来の競技スポーツシステムを包括するような生活課題を中心とする、いわば生活スポーツシステム・モデルを構築する必要性とその戦略モデルを提示することにあった。 具体的には、わが国の競技スポーツシステムにおける国民体育大会のあり方を検討することによって、社会変化からみた生活課題の変化と競技スポーツシステムにおける公共性のあり方の変化を考察した。また、現在進行中の都道府県レベルにおけるスポーツ振興計画策定の現場から、地方自治レベルの政治課題と生活課題との関係を考察するとともに、実際の内容策定における生活課題のとらえ方が体育・スポーツの公共性をどのように担保するのかについて考察した。とくに、生活課題の側から総合型地域スポーツクラブの公共性がどのように担保されるのかについて検討したところ、従来の地域共同体における自治組織のあり方や学校運動部との関係が住民の具体的なスポーツ生活における課題としてどのように認識されているのかが重要であることが理解された。すなわち、文部省が策定したスポーツ振興基本計画における重点施策としての総合型地域スポーツクラブ設立は、従来の手法である政治課題としてのとらえ方だけでは公共性を担保しえない可能性があるということである。 現在進行中の体育・スポーツにかかわるさまざまな施策の変化は、わが国におけるこれまでの体育やスポーツの公共性に対する根本的な懐疑を伴うものであり、体育やスポーツそれ自体の概念の変更を生活者の欲求の側から鋭く問い直す契機となっていることは本研究の基本的前提であった。しかし一方で、その前提は健康と体育との関係を強調する従来の体育システムに加えて、それをスポーツとの関係にまで拡張しようとする「必要性」の論理からスポーツの公共性を担保しようとする逆コースの動向によって大きく揺さぶれている状況もみられる。このような動向は、未だにスポーツが生活者の欲求の側からその公共性を担保される「可能性」を阻み、むしろ社会のさまざまな不安の延長線上に健康問題を位置づけ、これを個人の側に煽ることによって、従来の政治課題に引き寄せてスポーツの公共性を担保しようとするものであろう。そのような意味で、「民」や「私」と「公共性」の概念は、スポーツシステムにおいて、さらに巧妙に対立させられる傾向がみられることに留意しておく必要がある。 本研究では、主にスポーツイベントにかかわる「公共性」構築の戦略モデルを提示するに止まったが、今後は上記のような逆コースを克服するモデルを含め、文化としてのスポーツの公共性に関する社会学的研究のさらなる検討が必要であることが課題として提示された。
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Research Products
(6 results)