2002 Fiscal Year Annual Research Report
「九州一周駅伝」の社会学的研究―メッセージの内容と読み手の解釈作業―
Project/Area Number |
14580042
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
山本 教人 九州大学, 健康科学センター, 助教授 (50230579)
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Keywords | 九州一周駅伝 / メディア・メッセージ / テキスト分析 |
Research Abstract |
本年度は、「九州一周駅伝」を報じた西日本新聞の記事50年分をテキストに、新聞がどのようなやり方で駅伝を社会的に意味ある出来事として物語ってきたのかについて検討した。その結果、つぎのようなことが確認された。 新聞は当初、九州一周駅伝を「郷土愛」の象徴として位置づけ、報じていた。だが間もなく、社会の近代化のなかで九州一周駅伝の開催が危機に直面すると、新聞の駅伝報道は、選手と渾然一体となった観衆の応援スタイルを郷土愛の発露として礼賛する語りを放棄せざるを得なくなり、代わりに、近代的な社会生活のなかで駅伝のもつ啓蒙的、教育的な意義を強調しはじめた。そして、健康やジョギングブームをきっかけとし、走ることや駅伝という競技の面白さが広く理解されるようになってくると、九州一周駅伝を報じる新聞の紙面からは、駅伝の社会的意味をくどくどと説明するような記事が消えていった。今日の駅伝記事は、駅伝マニアを喜ばせるような駅伝ヒーローやスター選手たちの情報であふれている。いまや駅伝は、「大きな物語」を背景とすることなく、それ固有の面白さから社会的な存在価値が認められるようになったということである。 また、今日の新聞の駅伝記事は、主張を明確に表明せず、結論を暖昧にするような書き方で構成されているように思われた。このような記事の有する暖昧さは、今日の駅伝記事が個人情報を中心に構成されているということとともに、多様な解釈を読み手にもたらすことになるだろう。そうだとすれば、読者の「能動的な読み」とは、実はテキストの構造自体が可能とするものであると考えることができる。近年、必ずしも評判が芳しいとはいえないメディア・メッセージの内容分析の意義が、このような観点から確認された。
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Research Products
(1 results)