Research Abstract |
14年度,表面電極法より導出した運動単位(MU)活動電位波形の解析から筋単位長を算出する方法を確立した.この方法を用い,本年度は,MUの筋単位長の算出を,"各種発揮筋力強度条件"および"持続的筋力発揮条件"において試み,筋単位長変化とMU活動の関係を検討した。被験筋は内側広筋とし,等尺性膝関節伸展(90度)を行なわせた.MU活動電位は,PCに取り込み,解析処理ソフトを用いて波形の解析を行った.筋単位長は,運動終板から末梢側の腱までの長さとして算出した. 【実験1:発揮筋力と筋単位長の関係】最大筋力(maximal voluntary contraction : MVC)の5%から20%までの各種強度筋力を発揮し,筋力強度に伴うMU放電間隔および筋単位長の変化を観察した.5%MVCにおいて筋単位長は約61mmであった.20%MVCまで発揮筋力に依存して筋束長は直線的に短縮した.20%MVCでは,5%MVC時に比較して約5%短縮したMU放電間隔は,5%MVC時に115.9msを示し10%MVCでは96msと有意に短縮した.しかし,それ以降20%MVCまで有意な放電間隔短縮は認められなかった.以上のことから,等尺性筋力発揮においてMUレベルでも筋単位長の短縮が生じることが確認された.また,この短縮は,放電間隔からみたMU活動レベルと必ずしも直線的な関糸をもたないことが明らかとなった. 【実験2:持続的筋力発揮時の筋単位長の変化】最大筋力の10%を目標筋力として設定し5分間保持した.この間のMU放電間隔と筋単位長の変化を経時的に観察した.私達のこれまでの報告と同様に,持続的筋力発揮時2-3分目までMU放電間隔は延長を示した.筋疲労が生じていないことを表面筋電立で確認した(加茂2004).筋単位長は,この間,漸次短縮した.3分目では筋力発揮初期値に比較して約4%短縮した.放電間隔延長は,MU活動レベルの低下を反映する.したがって,持続的筋力発揮では,疲労がない状態において個々のMUの活動性は低下し,その際,活動性の低下にも関わらず筋束長は短縮することが明らかとなった. 以上,2つの実験から,MU活動と筋単位長変化の関係は,筋収縮の様式に依存し,単純ではないことが明らかとなった.これは非常に興味深い結果であり,生体内MUの収縮および力発揮について理解するために,今後,メカニズムや合目的性について追求していく必要がある.
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