2002 Fiscal Year Annual Research Report
伝統的産業の集積地域における持続的生産システムに関する研究
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14580078
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Research Institution | Fukushima University |
Principal Investigator |
初澤 敏生 福島大学, 教育学部, 助教授 (10211476)
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Keywords | 伝統産業 / 地場産業 / 持続的生産システム / 生産構造 / 象眼(象嵌)製造業 / 肥後象眼 / 京象嵌 / 加賀象嵌 |
Research Abstract |
本年度においては、伝統的産業の持続的生産システムを明らかにするため、象眼(象嵌)製造業と陶磁器製造業を事例として調査・研究を実施した。 象眼(象嵌)製造業は熊本(肥後象眼)、京都(京象嵌)、金沢(加賀象嵌)と、日本に3産地しか残存していない希少な産業である。江戸時代においては刀の装飾などで大きな集積を示したが、明治以降、各地で廃絶し、現在残存する産地もたびたび廃絶の危機に瀕しながら生産構造を転換し、技術を伝承してきた。本研究においては、肥後象眼を中心にその生産構造を明らかにすることを通して持続的生産システムを把握するとともに、その特徴をより明瞭に示すため、京象嵌、加賀象嵌の各産地の生産構造についても調査し、比較検討を加えた。この結果、肥後象眼と京象嵌は基礎的な技術においては共通性を持つ一方で、コストダウンへの対応の仕方から分業体制の構成が異なり、それが製品の特性や生産技術の相違に結びついていること、それが生産性や製品価格の差に結びついている。ただし、生産性と高度な技術の伝承とは相反する側面があり、安価な製品の生産の拡大が産地の技術的基盤に影響を与えつつある。また、技術伝承においては産地内で中核となる職人や製造卸の特性によって差が現れ、それが産地の特性を形成していくことを把握した。この点からいえば、象眼(象嵌)製造業の技術伝承等は産地単位ではなく、企業・職人を技術的な系列別に把握し、それを単位として明らかにしていくことが必要である。 また、陶磁器製造業では岡山県の備前産地を対象として研究に着手、備前産地の窯元の生産構造、規模、流通特性等に関する各種データを収集した。ただし本年度は象眼(象嵌)産地研究に主眼をおいたため、備前産地に関しては予備調査と基礎統計、文献類の収集に重点を置いた。本調査は平成15年度から着手する予定である。
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