Research Abstract |
衣環境における不快臭の除去を目的に,昨年度は金属塩と直接または酸性染料で綿布,羊毛布,羽毛を染色し,消臭効果を検討した.臭い物質のエチルメルカプタンに対し,綿染色布は含金属(銅)量が羊毛染色布の10%にもかかわらず高い消臭効果を示し,また,染色羽毛は市販活性炭と同程度の消臭速度を示した.本年度は,媒染剤と布の種類を変えて調製した染色布の消臭効果と,インバースガスクロマトグラフ(lGC)法を用いた消臭機構の検討を行った. 綿ブロード40番,綿メリヤス,脱脂綿を金属塩(銅,銀など)で先媒染後,数種類の含金属直接染料やインジゴで染色し,再び金属塩で後媒染し,染色物の調製した.染色物の金属量は原子吸光法で定量した.試料を2Lテドラーバッグに入れ,検知管法でエチルメルカプタンの残存率を求めた.また,綿ブロード染色布をステンレスカラムに充填後,ガスクロマトグラフに装着し,ヘリウムをキャリアガスとして,蒸留水または酢酸を注入することにより,IGC法で吸着挙動を検討した. 銅または銀塩で媒染し,インジゴで染色した綿ブロードの消臭効果は,これまで得られた含銅直接染料と銅塩で媒染した綿布と同様に大きかった.水に不溶性のインジゴ(建染染料)染色布の洗濯堅ろう度が高いことは既知で,消臭効果の持続性が期待される.形態の異なる3種類の綿において,先媒染処理綿の含銅量は0=脱脂綿<ブロード<メリヤスで,後媒染処理綿の含銅量はブロード<脱脂綿≒メリヤスであった.消臭効果は必ずしも含銅量とは相関せず,銅の結合様式の違いにより消臭能が異なることがわかった.特に,単独で綿に吸着した銅の消臭能が高いと考えられた.IGC法による綿布,先媒染綿布,先・染色・後媒染綿布の水に対する吸着等温線はいずれも低相対圧領域でシグモイド型を示し,多分子層吸着が示唆された.低温度では未処理布に比べて染色処理布の吸着量がわずかに多かった.酢酸についても染色処理布の吸着量がわずかに多く,媒染による酢酸の吸着が認められた.
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