2004 Fiscal Year Annual Research Report
日本人英語学習者の文法能力発達メカニズムの解明に関する研究
Project/Area Number |
14580275
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Research Institution | Joetsu University of Education |
Principal Investigator |
大場 浩正 上越教育大学, 学校教育学部, 助教授 (10265069)
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Keywords | 第二言語習得 / 普遍文法 / 機能範疇 / 形式素性 / wh疑問 / 関係節 / Subjacency / Generalised Blocking Principle |
Research Abstract |
成人による第二言語の文法知識の習得に,第一言語の文法知識の習得を制限すると言われている普遍文法(の原理)がどの程度有効であるかを調査している近年の研究は,学習者の第一言語の機能範疇において具現化されていない形式素性が第二言語において習得されるかに焦点を当ててきた。本研究は,同様の研究方針に沿い,日本語母語話者(成人)が,日本語では具現化されていない,英語の機能範疇C(補文標識)に存在する形式素性(wh疑問における強い素性[+wh]と関係節における[+R])を習得出来るか否かを,wh疑問構文と関係節構文におけるwh移動の理解の側面に焦点を当て,次の2つの普遍文法の原理を用いて調査した:(1)wh疑間と関係節の形成におけるwh移動の制約に関する「下接の原理」と(2)関係節の意味を計算するための意味的操作の適用に関する「一般化阻止原理」。 実験には287名の成人日本人英語学習者が参加し,実験参加者は総合的な英語能力を測るテストであるOxford Placement Testの得点により,ElementaryからAdvancedまでの5段階に分けられた。実験には文法性判断テストが用いられ,実験参加者は提示された文の文法性を5段階で評価した。統制群として英語母語話者16名が実験に参加した。 結果として,英語能力がHigh-intermediateレベルに達すると,英語母語話者と同レベルでwh疑問構文と関係節構文の両方の文法性と非文法性を正しく判断できることから,それらの形態的特徴を習得できることが明らかになった。また,Advancedレベルに達すると,形式素性の習得(従って,「下接の原理」や「一般化阻止原理」が発動)により,英語母語話者と同様にwh移動によるwh疑問構文と関係節構文の形成が出来るようになった。日本語におけるwh疑間構文と関係節構文の(wh移動を除く)生成過程の相違が第二言語の習得にどのように影響を与えるかを考察したが,特に相違は見られなかった。
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