Research Abstract |
技術科教育におけるのこぎりびき技能の習得を支援する作業音に着目した新たな指導方法の確立を目的とする。熟練者の作業動作には,一定のリズミカルな動きが認められ,安定した作業音が発生する。そこで,視覚により作業動作を判定して指導する方法に加え,リズミカルな作業音を擬音で表現するなど,聴覚的な指導内容を取り入れることで,技能の習得を容易にする指導方法を検討した。本研究では,のこぎりびき作業時における発生音と技能レベルとの対応を検討した結果,(1)熟練者の発生音は,のこぎりを引くときの音のレベルが戻すときと比較して大きく,きれいなヒョウタン型の波形が連続する。(2)強い力で切削を行うと,切削面の粗さが増加する。このときの発生音は,引くときの音に,突発的な大振幅音が複数又は引き始めに発生する。なお,繰り返し動作の周期は遅くなる傾向にある。(3)弱い力で切削を行うと,切削面の粗さは減少する。このときの発生音は,のこぎりを引くときの音と戻すときの音のレベルがほぼ同レベルとなり,強弱のない音として聞こえる。(4)教師が目視によって確認できる姿勢などの基本的項目を指導しただけでは,切断精度を十分に向上させることが出来ないこと。(5)切断精度の良いグループには,理想的な音の強弱パターンが認められ,一方,切断精度の悪いグループは,音のテンポが乱れ,強弱の調子も少ない傾向にあり,力の入れすぎ時の音のパターンに類似した。したがって,のこぎりびき作業が精度良く効率的にできるようになるためには,学習の初期段階で示範を行い,姿勢などの基本的項目を指導した上で,その後に加工動作,姿勢,力の配分などを必要に応じて指導する。さらにその後に,音の強弱とその周期を意識させ,再度の示範も含め,姿勢・目の位置・力の配分など,個々の加工動作のなめらかな連結促す指導方法が有効である。
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