2003 Fiscal Year Annual Research Report
日本語習得の認知過程と教育的介入:「〜ている」の中間言語文法知識の形成
Project/Area Number |
14580339
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
小柳 かおる 上智大学, 比較文化学部, 助教授 (90306978)
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Keywords | Fucus on Form / 視覚的インプット強化 / 潜在学習 / 潜在記憶 / 言語適性 / ワーキングメモリ / 情報処理速度 |
Research Abstract |
第二書語習得(SLA)研究において言語学習を促進すると考えられるのは、学習者が意味のある伝達活動に従事している中で適宜言語形式への注意を向けさせるような指導(Focus on Form)である。その一つの手法が視覚的インプット強化で、読みのテキストにおいて学習者が注目するように、ある言語形式に下線を引く、枠で囲む等の操作をすることである。この手法が有効かどうかは、先行研究の結果は分かれている。最近のSLA研究の動向に鑑み、教育的介入が自然で学習者の言語処理過程を阻害しないような学習をデザインし、潜在学習の効果を測定できるようなテストの開発に努めた。インターネット上でテキストを読んで目標言語形式を見る時間が学習者間で一定になるようにコントロールし、資料を読んで新聞の特集記事を考えるというタスク性のある読みの中で、視覚的インプット強化をしたグループ(インプット強化群)と、そのような操作をしていないテキストを読んだグループ(インプット洪水群)とを比較した。その結果、目標言語形式「〜テイタ」の自由作文の正用率では、インプット強化群が少なくとも学習直後にインプット洪水群に対して統計上の有意傾向が見られた。また、文の好みのテスト(潜在記憶課題)では両グループとも学習直後より6週間後に、ほぼ同じ内容を示す文の中から「〜テイタ」が含まれた文を選択する割合が高くなり、潜在学習におけるアウェアネスが増しているようであった。実験は被験者の数が限られていたことや、統制群を置けなかったことなどの問題があり、学習の効果は暫定的であることから、学習効果と学習者の認知能力との交互作用を、質的に分析した。その結果、視覚的インプット強化から恩恵を受けるかどうかは、情報処理速度や文章記憶が関わっているようであった。今後は新たな認知能力テストの追加やテストの改良をして、より多くの被験者を用いて追検証が必要である。
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