2003 Fiscal Year Annual Research Report
高頻度価格変動データの情報科学および物理科学的手法による解析
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14580385
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
田中 美栄子 鳥取大学, 工学部, 教授 (20257570)
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Keywords | 経済物理 / 金融時系列 / 高頻度価格変動 / 条件付確立 / 相互情報量 / マルコフ過程 / 戦略の自動生成 / 進化的計算法 |
Research Abstract |
引き続き高頻度金融価格時系列の計算機解析を行いその結果をいくつかの国際会議・国内研究会に参加して研究報告を行うと共に、新しいアイデアの開拓のため情報収集を行いつつ、将来の共同研究の可能性を探った。オックスフォード大学で開催されたKES2003では高頻度金融時系列の特徴的な性質に関する研究発表を行い、同時に英国のSTS(社会における科学技術の位置づけ)の現状の調査を行った。これは直前になって別予算で実行できたため、当該予算は国内研究会数件のほうに使用することが出来た。また、予定されていたハワイでの国際会議が新型肺炎の流行のためキャンセルになり、また6月に鳥取大学に昇格転任したことにより、余分の教育義務が倍増したために予定していた国際会議参加を2件断念した。一方、統計数理研究所との共同研究で経済物理学に関する研究会を前年度に引き続き行い、年3回の研究会を8月と11月に東京の統計数理研究所で、また3月に鳥取大学工学部において開催した。これらの予算は統計数理研究所の共同研究に依存して行うことが出来た。ニューヨーク証券取引所の株価高頻度時系列(ティックデータ)を1993年から2002年までの10年分、別の共同研究予算で購入できたので、残りの予算を赴任したばかりの鳥取大学工学部知能情報工学科知識工学講座における研究室の立ち上げ費用として投入した。7月末から8月初めにかけて京都大学メディア情報センターで行われた、U-Mart人工市場実験に関連したプログラム講習会に研究室の院生を派遣した。さらに1月に例年別府で行われているAROB(人工生命とロボットの国際会議)には研究室のメンバー4名とともに参加した。この会議で学生との共同研究の結果に対し、学生に対する若手論文賞を受賞した。そのほか、3月に鳥取大学で行われた電気学会主催の情報システム研究会に学生・院生を含めて6件の発表を行ったがそのうち3件が高頻度金融データを使用した研究である。また、1月に北海道大学で行われた電子情報通信学会のニューロコンピューティング研究会においても研究発表を行った。また、関連テーマを扱った本を共同で翻訳し、出版した。(入門・経済物理学:暴落はなぜ起こるのか?:PHP研究所) こうした活動の中から、高頻度金融時系列の従う特徴がいろいろとわかってきた。まず条件付確率が長期にわたって安定でほぼ一定値で直前と反対向きに動く確率が3分の2程度になり、記憶長3ティック程度のマルコフ過程となること、自己相関関数、相互情報量もそれに矛盾しないことなどである。そこで超短期の予測戦略を自動生成するプログラムを作成することを考え、実際のティックデータを環境と見立ててそれに適応してゆく仕掛けとしての進化的計算手法を用いて、予測ルールを生成する計算機実験を学部学生とともに行った。また、ティックデータにカオスが見えるのかどうかを調べたがこれは良くわからなかった。これらの結果は3名の修士論文と1名の卒業論文の材料となった。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] Mieko Tanaka-Yamawaki: "On the Predictability of Financial Time Series"Knowledge-Based Intelligent Information and Engineering Systems : Proc.7th International Conference KES 2003. 1. 1100-1108 (2003)
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[Publications] Mieko Tanaka-Yamawaki, Tomohiro Motoyama: "Evolution of investment strategy in an environment offered by the real tick data"Proceedings of the 8-th International Symposium on Artificial Life and Robotics (Beppu, Oita, January 28-30, 2004). 313-316 (2004)
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[Publications] Mieko Tanaka-Yamawaki, Hiroto Tanaka: "Finding evolutional mechanism in financial time series by means of correlation dimension analysis"Proceedings of the 8-th International Symposium on Artificial Life and Robotics (Beppu, Oita, January 28-30, 2004). 563-566 (2004)
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[Publications] Mieko Tanaka-Yamawaki: "高頻度為替データの価格変動における特徴"宮崎大学工学部紀要. 32. 321-328 (2003)
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[Publications] 田中美栄子, 板橋毅: "為替市場と乱流の比較--確率分布とヴォラティリティ--"宮崎大学工学部紀要. 32. 329-336 (2003)
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[Publications] 田中美栄子, 元山智弘: "価格時系列という環境における投資戦略の進化"Technical Report of IEICE. NC2003-110(2004-1). 13-18 (2004)
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[Publications] 森谷博之監訳, 田中美栄子他(ソネット原著Princeton University Press): "入門・経済物理学:暴落はなぜ起こるのか?(第9章を担当)"PHP研究所. 362(31) (2004)