Research Abstract |
少子高齢社会では,高齢者のQOL (Quality of Life:生活の質)の評価,健康増進が重要課題である。本研究の目的は,体温,血圧などの生理情報に加え,行動や会話などの生体情報を無拘束・長時間計測が可能なシステムを開発し,QOL評価と自立促進を目的としたe-健康管理法を確立する点にある。特に,在宅高齢者のQOLを評価する場合,体温や血圧などの生理情報に加え,「会話」「食物摂取」「行動」に関する生体情報を無拘束でモニターし,「こころ」の健康にも配慮することが必要不可欠である。 本年度は,無拘束生体情報モニタリングシステムを構成する個々の要素技術の開発を行った。近年,笑いと健康の関わりに関する医学的研究が行われ,免疫機能の向上,血糖値の低下など笑いにより生理機能が向上することが報告されている。本研究では,骨伝導マイクロホンを用いた笑い声モニタリングシステムを開発した。笑い声の音響分析から振幅波形の周期性とその分散から会話音声中の「笑い」認識法を開発した。 次に,脳梗塞などが原因で摂食・嚥下機能障害となった場合,舌運動のバランス機能回復が急務であることから,圧力センサ計測プローブを用いた舌-口蓋接触圧分布の簡易計測技術を開発した。本プローブを用いて,舌癌のため舌の一部を削除した患者の舌-口蓋接触圧分布を計測し,発話時の舌力のバランスを修正することにより発語明瞭度が向上することを示し,言語治療への有用性を明らかにした。 さらに,QOL評価と健康増進を目的としたe-健康管理システムのプロトタイプの開発を行った。このシステムの特徴は,CDジャケットサイズのセンサネットワーク対応の小型PCにより家庭内での実用性が高いこと,体温,心拍数,舌運動などの生体情報,室温,湿度,照度などの環境情報を用途に応じてカスタマイズできる点にある。本システムのフィールド実験を行い,実用性を確認した。
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