2003 Fiscal Year Annual Research Report
緊急時対策としての海域における放射性核種移行モデルの開発
Project/Area Number |
14580575
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
和田 明 日本大学, 生産工学部, 教授 (00210972)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉本 隆成 東京大学, 海洋研究所, 教授 (40004428)
落合 実 日本大学, 生産工学部, 助教授 (80120400)
遠藤 茂勝 日本大学, 生産工学部, 教授 (10059735)
立田 穣 (財)電力中央研究所, 応用生物部, 主任研究員 (60371522)
渡部 輝久 放射線医学総合研究所, 防護体系構築研究G, チームリーダー (80167189)
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Keywords | 原子力施設 / 分配係数 / スキャベンジング / 感度解析 / 放射性物質の海洋拡散 / 元素分析 / 放射性核種の生物への移行 |
Research Abstract |
(1)北極海を対象として3次元流動解析結果(開発済)を用い、事故時の放射性物質の濃度解析を行った。核種拡散モデルには海水の流動、拡散の他に物質間の吸着・脱着(スキャベンジング効果)、海水と海底堆積層(3層モデル)との相互作用を考慮したモデルの構築に努め、線量評価のための精度向上を図った。濃度解析は核種(Pu-239とCs-137)の放出シナリオに基づいて、局所域(カラ海、バレンツ海)と北極海全域を対象として実施した。 濃度解析ではパラメータ(分配係数値、粒子の沈降速度、SS濃度)が梅水及び海底土内の濃度におよぼす影響を検討した。 Pu-239の場合、3つのパラメータが大きいほど、海水中濃度が低く、Cs-137の場合はパラメータによる濃度への影響はPu-239よりも,小さいこと、どちらの核種においても海水に接する粒子層が最大値を示した。 核種が放出されてから、10年後(局所域)及び1000年後(全域)の濃度は核種により異なり、Pu-239では海底土内に90%、残りは海水中に残存すること、Cs-137では海水中に60〜80%、残りは海底土に残存する事を確認した。 (2)放射性核種の底質移行に係わる浮遊懸濁物の役割に着目し、懸濁物の放射性核種吸着量を支配する要因の一つである懸濁物の物理化学的特性を調べるためにPIXE法を用いた元素分析を実施した。試料は那珂湊の海水を用いた。1年間に亘る調査の結果、主要元素の濃度はほぼ一定であり、海洋中での生物活性の季節的変動にも拘わらず安定であることを見出した。 更に、室戸沖の表・深層水、青森県を囲む3海域での懸濁物元素組成を比較した結果、元素濃度はほぼ一様であった。従って、浮遊懸濁物の元素組成は海域間及び季節間で大きな変動は無く懸濁物による核種の吸着効果は各海域で同様でスキャベンジング効果は濃度に依存することを確認できた。 (3)生物への移行に関するデータを収集してプランクトン生態系による放射線核種の鉛直方向の輸送モデル化を検討した。14年度に構築した生物中のCs-137の濃度予測モデルについて検証データの取得を行った。 検証データとしてIAEA・モナコの海洋研究所がモナコ沖合で観測したチェルノブイリ事故時のCs-137のデータを適用して、海産生物中Cs-137の動的濃度予測3次元モデルを検証した。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] 落合 実, 和田 明, 高野 泰隆: "北極海のカラ海、バレンツ海における放射性物質の濃度解析"海洋調査技術学会誌. 15巻2号. 37-57 (2003)
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[Publications] Akira Wada, Minoru Ochiai, Tairyu Takano: "Marine contamination in the Arctic Ocean"Journal of Hydraulic Research. 42(2). 1-16 (2003)
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[Publications] 杉本 隆成: "気候変動と水産資源"学術月報. 56巻5号. 463-468 (2003)
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[Publications] 杉本 隆成, 田中 勝久, 佐藤 英夫: "有明海奥部における浮泥の挙動と低次生産への影響"沿岸海洋研究. (印刷中). (2004)
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[Publications] T.Watabe, S.Yokosuka, A.Kurosawa: "Availability of Mollusks as "Biological Monitor"to Monitoring of the Long-lived Silver Isotope Released into the Marine Environment"Proceedings of the International Symposium : Transfer of Radionuclides in Biosphere, Prediction and Assessment. 192-198 (2003)
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[Publications] Yutaka Tateda, F.P.Carvalho et al.: "Fractionation of ^<210>Po and ^<210>Pb in coastal waters of the NW Mediterranean continental margin"Continental Shelf Research. 23. 295-316 (2003)
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[Publications] 杉本 隆成: "海流と生物資源"成山堂書店. 268 (2004)