2002 Fiscal Year Annual Research Report
家禽胚発生における遺伝子発現を指標とした内分泌攪乱化学物質リスク評価法の確立
Project/Area Number |
14580577
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
高橋 慎司 国立環境研究所, 環境ホルモン・ダイオキシン研究プロジェクト, 主任研究員 (20197148)
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Keywords | 内分泌攪乱化学物質 / 環境ホルモン / 鳥類 / エストロジェン / 生殖器 / 性分化 / 遺伝子発現 / 性決定遺伝子 |
Research Abstract |
鳥類の生殖器分化の実験モデルとしてニワトリ胚を用い,胚発生期(孵卵4-16日)の生殖腺における性決定関連遺伝子と,性ステロィド受容体および合成酵素遺伝子の生理的な発現をRT-PCR法を用いて測定した.さらに,内分泌攪乱物質の代表例として合成エストロジェンdiethylstilbestrol(DES)を受精卵の卵黄内に投与し,これら遺伝子の発現変化を検討した.コレステロールからアンドロステンジオン合成に関与する酵素P-450scc, P-450c17および3β-HSDの遺伝子発現は雌雄ともに胚発生6-8日頃から経時的に増加したが,テストステロンを合成する17β-HSDは雄よりも雌で強く発現し,アロマターゼ遺伝子は雌でしか検出されなかった.この結果は,鳥類の本来の性は雄であるが,エストロジェンの早期分泌によって雌個体の特徴を獲得するという考え方を支持している.また,エストロジェンレセプターαおよびβは雌雄ともに孵卵4日から一定の発現を示しており,雄胚がエストロジェン曝露に応答して雌性特徴を示す根拠となると考えられる.しかしながら,これらの遺伝子発現は,生殖器の形態分化に作用を示す用量のDES(1-100ng/egg)を投与しても影響されなかった.また,性決定に関与すると提案されている因子(抗ミュラー管ホルモン,SF1,Sox9,DMRT1等)の遺伝子発現もDESによる変化は認められなかった.卵黄蛋白vitellogeninはエストロジェン曝露時に雌雄胚の肝臓に検出されるが,本研究では高用量DES投与(100μg/egg)によっても雌雄胚の肝臓に発現は認められなかった.文献的にもエストロジェンに対する胚Vitellogeninの応答は鈍く,低活性エストロジェン作用物質の検出には不向きであると考えられる.したがって,本研究には生殖器発達に関与する遺伝子の新たな探索が必要である.
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