2002 Fiscal Year Annual Research Report
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14580603
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
五箇 公一 国立環境研究所, 生物多様性研究プロジェクト, 総合研究官 (90300847)
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Keywords | セイヨウオオマルハナバチ / オオマルハナバチ / クロマルハナバチ / 種間交雑 / 多回交尾 / 精子 / マイクロサテライト / 侵入生物 |
Research Abstract |
本年度は、輸入セイヨウオオマルハナバチによる日本産マルハナバチの交尾攪乱の可能性を検証した。マルハナバチの女王は野外ではほとんどが1回交尾であることが報告されている。しかし、飼育条件下では複数回交尾を行うことが観察され、また、オスは複数回交尾を行うことが報告されている。野外で観察が困難なマルハナバチの交尾に関してはまだ不明な点が多く、本実験では飼育下でオスの交尾能力の検討、そしてかねてから問題とされている異種間交尾を中心に研究を行った。オスの交尾能力を検討するにあたり、交尾行動、未交尾オスの日齢に伴う精子生産数の推移、多回交尾時の残存精子数と女王に伝わる精子数を調査した。オスは室内では少なくとも9回交尾可能であることが確認された。また、オスの残存精子数と交尾相手となった女王に伝えられた精子数の調査より、交尾回数を重ねるとオスの射精量が減少し、女王に伝わる精子数も減少していることが明らかとなった。しかし、少なくとも4-5回程度の交尾までは精子を女王に伝えることを確認した。これは、オス間競争が激しい可能性が示唆される。外来種であるセイヨウオオマルハナバチが日本産マルハナバチと交尾を行い、日本産マルハナバチの繁殖効率を低下させることが以前より危惧されている。本実験では、オオマルハナバチの女王が通常の繁殖時期でない春に交尾を行うこと、また、その際にセイヨウオオマルハナバチの精子が女王に伝わることを確認した。また、異種間交尾を行ったクロマルハナバチ女王が産卵した卵を分析にした結果、セイヨウオオマルハナバチの精子は産卵時に利用されていることが明らかとなった。現在までの異種間交尾実験によって雑種個体の誕生は極めて生じにくいものと考えられている。卵から精子の遺伝子型が確認されたことから、異種間交尾を行った女王の産下した卵は受精しているにも関わらず、胚発生の段階で何らかの障害があり、正常に発育しない可能性が高いと考えられる。
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