Research Abstract |
好熱性放線菌(Thermoactinomyces vulgaris R-47)は,2つのα-アミラーゼ(TVA1,TVA2)を持つ。これらは,デンプンに加えて,通常のα-アミラーゼがほとんど加水分解できない環状オリゴ糖であるシクロデキストリン(CD)をも加水分解できるという興味深い基質特異性を持つ。これらの酵素のCD加水分解機構を解明するために,平成14年度においては,以下の研究を行った。 (1)TVA2不活性型ミュータント酵素とα-,β-,γ-CDとの複合体のX線結晶解析 TVA2の触媒残基であるAsp325とAsp421の2残基をAsnに置換したミュータント酵素を合成し,α-,β-,γ-CD(それぞれグルコース単位が6,7,8)との複合体の結晶を作成し,X線結晶解析を行った。X線データは,放射光(高エネルギー加速器研究機構PF,およびSPring-8)により収集した。3.0Å程度の分解能での解析ではあるが,全ての複合体において,触媒部位へのCD結合が認められた。現在,酵素-基質間の相互作用を詳細に観るため,構造の精密化をすすめている。また,同時に,より高分解能データ収集の準備をすすめている。 (2)TVA1不活性型ミュータント酵素とγ-CDとの複合体のX線結晶解析 TVA1は,TVA2と異なり,γ-CDだけを加水分解する。TVA1不活性型ミュータント酵素とγ-CDとの複合体のX線結晶解析を,TVA2と同様の方法で行った。その結果,γ-CDは,触媒部位には,結合しておらず,触媒部位から離れた酵素表面に結合していた。現在,触媒部位へのγ-CDの結合を目指し,結晶化条件を検討するとともに,酵素表面結合部位も,酵素触媒活性に何らかの役割りを果たしているのではないかと考え,その役割りを解明すべく実験計画を立てている。
|