2002 Fiscal Year Annual Research Report
リポソームが存在する非平衡熱水環境下におけるアミノ酸の重合
Project/Area Number |
14580669
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Research Institution | Nagaoka University of Technology |
Principal Investigator |
今井 栄一 長岡技術科学大学, 工学部, 教務職員 (30134977)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
羽鳥 晋由 長岡技術科学大学, 工学部, 助手 (00283036)
本多 元 長岡技術科学大学, 工学部, 助教授 (20192742)
松野 孝一郎 長岡技術科学大学, 工学部, 教授 (10120346)
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Keywords | アミノ酸重合 / オリゴペプチド / リン脂質 / 非平衡反応 / 進化フローリアクター / リポソーム / 冷却温度勾配 / 局所反応の場 |
Research Abstract |
原始地球上で原始タンパク質様物質の出現に至る過程においては,オリゴペプチドの生成が第一の段階となる.アミノ酸単分子を重合させる反応の場として海底熱水噴出孔近傍の熱水環境に着目した.熱水と冷水との界面に生じる大きな冷却温度勾配を有する非平衡反応の場を実現した進化フローリアクターを用い,リン脂質DPPC(ジパルミトイルフォスファチジルコリン)が造る微小空間(リポソーム)がアミノ酸重合反応の場として有益であるか否かについて実験的な検証を行った. リポソーム内部のグリシン濃度を変化させた出発反応溶液を用意し,同一条件で進化フローリアクターを運転し,運転開始後120分経過時におけるグリシンオリゴマーの生成量の評価を行った.すべての出発反応溶液に含まれるグリシンの分子数は一定である.リポソーム内部に封入したグリシン濃度を1Mにした場合は,同じくグリシン濃度を0.1Mにした場合と比べてグリシン2量体の生成量が4倍に増大した.またグリシン2量体の生成量はリポソーム内部のグリシン濃度に依存することを確認した.次にリポソーム内部に封入した溶液にグリシンを入れなかった場合は,グリシン濃度を0.1Mにした場合と比べて生成量に変化は認められなかった.さらにDPPCの膜構造を界面活性剤によって破壊した場合においてもグリシン重合反応の促進は見られなかった. 以上のことからリポソームが造る微小な反応の場がグリシンの重合を促進することが判明し,リポソームの表面そのものはグルシンの重合の促進に寄与するものではないことが認められた.この事実はリン脂質が造る構造物の内部でグリシンの会合が促進され,それがグリシンオリゴマーの生成量の増大に至ったことを示すものである.原始地球上での無生物的なアミノ酸重合反応にはリン脂質による膜構造が造る微小な局所空間の反応の場が有益であることが実験的に示された.
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