2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14580670
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
垣谷 俊昭 名古屋大学, 大学院・理学研究科, 教授 (90027350)
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Keywords | 電子移動 / トンネル効果 / タンパク質の構造揺らぎ / 光合成細菌 / 反応中心 / キノン / バクテリオクロロフィル / 電子移動速度ゆらぎ |
Research Abstract |
タンパク質中電子移動は、光合成や内呼吸などの生体エネルギー変換において中心的な役割を果たす。本研究は、生体の効率的なタンパク質中電子移動の速度と電子移動経路制御のメカニズムを理論計算によって明らかにする。具体的には、紅色光合成細菌の反応中心におけるバクテリオフェオフィチン(Bph)からキノンヘの電子移動の電子因子(電子トンネル行列要素の2乗>が、タンパク質媒体の熱揺らぎによってどのように変化するかを、量子化学計算と分子動力学シミュレーションを組み合わせた研究をおこなった。その結果、電子因子は1ピコ秒内外の短い時間に最大4桁の大きさの変動を示した。その原因をタンパク質の構造に基づいて解析した結果、Try252がBphに接近するとき、Try252を主要な電子トンネル経路として使い、Met218がBphに接近するとき、Met218を主要な電子トンネル経路として使い、これらの場合に電子因子は大きな値になる。他方、Try252とMet218の両方がBphから同じ程度の距離にあるときには、両者を通るトンネルカレントが破壊的干渉効果を起こし、電子因子が4桁も小さくなることが明らかになった。タンパク質媒体は熱ゆらぎによって、Try252とMet218の位置を激しく変動させ、それに伴い、電子トンネル経路が変化するとともに、干渉効果も大きくなったり小さくなったりする変動を見せていることが明らかになった。このように、タンパク質中の電子移動経路は化学結合のみを通る安定したものとはまったく異なり、さまざまな並行して起こる電子トンネル経路間の競争と干渉効果が大きく働いていると結論される。これは、これまで多くの人々に受け入れられてきたpathwaymodelの根拠を覆すドラスティックな結論である。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] T.Kakitani et al.: "Empirical Formula of Excition Choherent Domain in Oligomers and Application to LH2"J.Phys.Chem.A.. 106,10. 2173-2179 (2002)
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[Publications] T.Kawatsu et al.: "On the Anomaly of the Tunneling Matrix Element in Long-Range Electron Transfer"J.Phys.Chem.B. 106,19. 5068-5074 (2002)
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[Publications] T.Kakitani, et al.: "Unique Mechanisms of Excitation Energy Transfer, Electron Transfer and Photoisomerization in Biological Systems"V. Biol. Phys.. 28. 367-381 (2002)
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[Publications] A.Yamada et al.: "Analysis of Cis-Trans Photoisomerization Mechanism of Rhodopsin Based on the Tertiary Structure of Rhodopsin"J.Photoscience. 9,2. 51-54 (2002)
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[Publications] T.Kawatsu et al.: "Destructive Interference in the Electron Tunneling through Protein Media"J. Phys. Chem. B. 106,43. 11356-11366 (2002)
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[Publications] A.Yamada et al.: "A Computational Study on the Stability of the Photonated Schiff Base of Retinal in Rhodopsin"Chem. Phys. Letters. 366. 670-675 (2002)