2002 Fiscal Year Annual Research Report
表皮形成過程における膜結合型増殖因子proHB-EGF切断制御の意義と機構の解析
Project/Area Number |
14580696
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
岩本 亮 大阪大学, 微生物病研究所, 講師 (10213323)
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Keywords | 増殖因子 / HB-EGF / エクトドメインシェディング / EGFファミリー / 組織再生 |
Research Abstract |
EGFファミリーに属する増殖因子HB-EGFは、膜結合型として合成された後、細胞表面でプロテアーゼによる切断を受け分泌型へと変換される。これまでの培養細胞を用いた解析からHB-EGFが、表皮細胞の増殖や創傷治癒過程に関与していることが示唆されている。また、分泌型変異HB-EGFを発現するノックインマウスでは表皮の過形成がおこることを我々はすでに確認している。しかしながら、HB-EGFの生体内における機能についてはまだ不明であった。そこで我々は、まずHB-EGFの生体内における生理的機能を解析するために、HB-EGFノックアウトマウスを作製したところ、このマウスは心室拡張を伴った心機能不全と心臓弁の肥厚を呈した。このことから、HB-EGFはマウスの正常な心臓の発生と機能にとって必須であることが明らかとなった。しかし、HB-EGFノックアウトマウスにおいて皮膚形態形成には異常を認めなかった。 そこで我々はつぎに、皮膚再生過程におけるHB-EGFの機能解析を行った。アダルトマウスの定常状態の表皮ではHB-EGFの発現はほとんど検出されなかったが、レチノイン酸による皮膚の肥厚誘導や創傷後の表皮細胞にはその発現が強く認められた。表皮基底細胞特異的にHB-EGFを欠失させたマウス(Hb^<del>-K5-Cre)、プロテアーゼによる切断を受けない変異型HB-EGFを発現するノックインマウス(HB^<uc>)と正常型HB-EGF cDNAノックインマウス(HB^<lox>)間でレチノイン酸誘導後の表皮細胞の増殖を比較したところ、Hb^<del>-K5-CreマウスとHB^<uc>マウスでは、HB^<lox>マウスに比べて増殖が抑制されていた。創傷治癒の過程において、同様の比較を行ったところ、Hb^<del>-K5-CreマウスとHB^<uc>マウスでの表皮の再生はHB^<lox>マウスに比べて遅延していた。したがって、表皮細胞の増殖・再生過程には分泌型HB-EGFが表皮において機能することが重要であると考えられる。現在、表皮特異的に分泌型変異HB-EGF発現マウスを作製中であり、これを用いてさらに解析を進める予定である。
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[Publications] Toko Shimizu et al.: "Elevated levels of anti-CD9 antibodies in the cerebrospinal fluid of patients with subacute sclerosing panencephalitis"The Journal of Infectious Diseases. 185. 1346-1350 (2002)
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[Publications] Xiaochun Yu et al.: "Ligand-independent dimmer formation of epidermal growth factor receptor (EGFR) is a step separable from ligand-induced EGFR signaling"Molecular Biology of the Cell. 13. 2547-2557 (2002)
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[Publications] Ryo Iwamoto et al.: "Heparin-binding EGF-like growth factor and ErbB signaling is essential for heart function"Proc. Natl. Acad. Sci. USA.. 100. 3221-3226 (2003)