2002 Fiscal Year Annual Research Report
G-CSF受容体を介する好中球分化誘導のシグナル伝達機構の解析
Project/Area Number |
14580700
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
村上 宏 岡山大学, 工学部, 助教授 (90260174)
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Keywords | シグナル伝達 / 顆粒球コロニー刺激因子 / 受容体 / 細胞増殖 / 分化誘導 / 好中球 / サイトカイン |
Research Abstract |
好中球前駆細胞をG-CSF存在下で培養すると、G-CSFがG-CSF受容体を介して好中球の増殖と分化のシグナルが伝達される。これにより細胞は数日間増殖した後増殖を停止し、核の分葉が誘導され、成熟好中球へと分化する。そこで、受容体において分化誘導に必須の部位を特定する目的で、G-CSF受容体遺伝子にランダムに変異を入れ、好中球前駆細胞に導入し、G-CSFに応答して増殖はするが分化は誘導されない細胞株を樹立した。この細胞株の染色体DNAよりG-CSF受容体遺伝子をクローン化しそれぞれのクローンについて安定発現株のG-CSF依存の増殖応答と受容体の遺伝子塩基配列の決定をおこなった結果、G-CSF刺激により分化を誘導できず細胞が増殖し続けるG-CSF受容体は4番目のTyrを含むC末端59アミノ酸残基が欠損していることが明らかになった。この変異型G-CSF受容体発現株は12日間G-CSF存在下培養後も好中球特有の核の分葉化は見られなかった。そこで、受容体C末端の種々の欠失変異受容体発現細胞株を樹立しそのG-CSFに対する応答を検討した。C末端22残基内に、増殖抑制と核の分葉化に関与する好中球分化誘導に必須な領域が存在する事が明かとなった。C末端22残基欠失受容体発現細胞では、G-CSF依存のCDK阻害タンパク質p19の発現の低下と、Stat5の活性化維持の低下が見られ、これらが、G-CSF依存好中球分化誘導過程での増殖停止が起こらない原因と考えられた。
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[Publications] Omura, T., et al.: "Acceleration of granulocyte colony-stimulating factor-induced neutrophilic nuclear lobulation by overexpression of Lyn tyrosine kinase"European J. Biochem. 269. 381-389 (2002)